財団債権

古くから取引開係のあった会社が会社更生開始の申立てをしたうえ、当行に対して、更生開始決定が出るまでの運転資金の貸付を要請してきました。同会社の更生をはかることは当行にとっても長い目で見て利益ですし、こういう場合の貸金債権は一般の債権と違って更生手続によらずに優先的に弁済されると聞いているのですが、貸付を行なった場合、具体的にどの程度の保護が当行に与えられるのでしょうか。
破産宣告手続の費用、破産財団の管理、換価、配当に要する費用、管財人が清算事務を進めるためになした借財、賃借、雇傭などの契約の相手方の債権、破産管財人の報酬など、破産手続の進行上、当然必要とされる出費を、権利者の側からみて財団債権といいます。財団債権は、破産債権者全休の 利益のために出費されたものとの考えから、一般の破産債権に優先し、破産手続によらずに、破産財団から、直接かつ個別的に弁済を受けることができます。破産法はこの権利を四七条に列挙するほか、二八条、四八条、六〇条二項などに定めています。
財団債権者は、直接破産管財人に対して、その弁済を請求でき、管財人も随時弁済していきます。もし管財人が承認しないときは、財団債権者は、管財人を相手方として訴訟を提起し、さらに財団所属財産に対して強制執行をすることもできます。

スポンサーリンク

お金を借りる!

共益債権とは、更生会社に対する債権のうち更生債権や更生担保権に優先して、更生手続によらないで、随時弁済を受けうる権利です。それは、破産手続における財団債権とほぼ同じ性質のもので、更生手続における全債権者の利益になる原因にもとづいて生じた債権に、優先権を認めようとするものです。
共益債権は、その権利行使について届け出または調査という更生手続上の手続は不要で、管財人に直接、随時に請求すればよく、その支払いがないときは訴訟を起こし、会社財産に対し強制執行、仮差押え、仮処 分をすることもできます。
更生手続は、破産手続と異なり、会社の維持更生を目的とするので、開始決定後も、事業経営のための原材料購入費、人件費等多額の費用を要するわけで、そのための共益的出費も、破産における場合とは比較にならぬほど多額かつ多様で、複雑な問題を発生させます。
共益債権となる権利は、会社更生法二〇八条に列挙されているほか、別の規定によっても認められています。二〇八条のうち、例えば、一号は、更生手続開始申立て、公告、送達、関係人集会招集の各費用など、二号は、更生手続の開始後の会社の事業経営のため必要な原材料購入費、人件費、会社都合による整理解雇のための退職金など、三号は、更生計画にもとづき新株や社債を発行し、または第二会社を設立した場合の費用など、五号は、更生手続開始後管財人または会社の取締役が第三者より融資を受け、その他取引をする場合の相手方の請求権、八号は、取締役の任期満了したとき、または欠員を生じてこれを補充しなければならないために開く株主総会開催の費用などです。
会社更生法二〇八条以外の規定で認められている共益債権のうち重要なものを説明しておきます。
更生計画認可決定前に退職した会社の使用人の退職金は、自己都合または会社都合のいかんにかかわらず退戦前六ヵ月間の給料の総額に相当する額、またはその退職手当の額の三分の一に相当する額のうち、いずれか多い額を限度として共益債権となります。退職年金は、冬期に支給される年金額の三分の一が共益債権となります。
電気、ガス等の継続的供給の義務をおう双務契約については、更生手続開始の申立前に更生会社に対して供給したことにより生じた料金の未払いを理由に、更生手続開 始後は供給停止をすることができなくなります。そのかわりに、更生申立後、開始決定前に更生会社に対して供給した電気、ガス等の料金は共益債権とされます。
更生手続開 始後の更生会社に対する融資は、会社更生法二〇八条五号により、共益債権として保護されます。しかし更生申立後、まだ開始決定にいたらない間も、原材料の購入や人件費の支払いなどに多額の資金を必要としますが、従来、この間の事業の継続に欠くことのできない行為によって生じた債権を保護する規定がなく、したがって更生手続が開始されると、更生債権として棚上げされていました。そのため更生申立てをした会社は、つなぎ資金の借入れ等に困難をきたして、事業の継続に著しい支障をきたす例が少なくありませんでした。そこで新たに一一九条の三を設けて、取締役または保全管理人が選任されていれば、その管理人が、裁判所の許可を得て、資金の借入れ、原材料の購入その他会社の事業の継続に欠くことのできない行為をした場合につき、その行為によって生じた請求権を共益債権とすることにしました。ここで資金の借入れという場合、手形貸付、証書貸付のみならず、手形割引も合みます。
本問の場合、銀行の貸付金は共益債権となるわけです。ただこの貸付は、事業の継続に欠くことのできない場合にかぎられるので、たんに借入金の返済にあて るための借入れなどは合まれません。これは借りかえにより旧債権を共益債権化したのと同じ不当な結果となるからです。また更生裁判所の許可のあることが要件です。なお、借財禁止の保全処分が発令されているときは、別に裁判所よりこの禁止の解除を得ておくことも必要です。そこで、この貸付にあたっては、裁判所のこれらの決定謄本を提出させるとよいでしょう。
ここで共益債権となるというのは、更生手続開始決定の出されることが前提です。そこで更生手続開始の申立てが棄却されたり、あるいは申立ての取下げにより更生手続が終了すると、たとえ本条の許可があっても共益債権となりません。更生手続開始決定がでればよいわけで、後日その決定が取り消されても、すでに共益債権に転化していますので、会社更生法五一条三項の適用を受けることとなります。
更生手続から破産手続へ移行する場合、つまり更生手続開始申立棄却、更生手続廃止または更生計画不認可決定確定後、会社に破産原因ありとして裁判所が職権で破産宣告をした場合、これらの共益債権は財団債権となります。ここにいう更生手続開始申立棄却とは、更生手続開始決定の取消決定にともなって、申立てが棄却される場合のみを指すと解されていますので、それ以外の棄却の場合には、開始決定前の貸付金は、結局共益債権たる資格をついに取得しなかったわけですから、破産になっても普通の破産債権となる危険性をもっており、思わぬ損害を蒙むるおそれがあります。
貸付にあたっては、以上のような危険がありますので、会社の返済能力の有無、更生手続開始決定のでる見込みの有無などを、慎重に検討すべきでしょう。

お金を借りる!

特約による事前求償権/ 債権譲渡による保全と回収/ 手形書替え/ 債務引受と更改/ 履行引受による保全と回収/ 債務者と保証人の追加/ 限定承認と保全/ 根保証債務の相続/ 根保証人の解約権/ 物上保証人の死亡と担保解約/ 第二会社への債権保全/ 強制執行と執行手続き/ 督促手続/ 公正証書による強制執行/ 訴訟と調停/ 仮差押えの要件/ 仮差押え命令の取消し/ 動産に対する強制執行/ 被差押債権の特定の程度/ 債権差押えの効力の範囲/ 取立命令と転付命令/ 債権の二重差押と第三債務者/ 二重差押えの禁止/ 保全処分と強制執行/ 滞納処分と差押え/ 倒産と整理/ 破産宣告の申立て/ 和議と会社整理手続/ 更生手続開始決定前の保全処分/ 破産債権/ 財団債権/ 別除権と更生担保権/ 譲渡担保と破産/ 否認権/ 相殺権/ 時効の制度/ 時効期間/ 割賦弁済での期限の利益喪失約款/ 時効の中断/ 中断事由としての裁判上の請求/ 相殺の意思表示と時効中断/ 手形の呈示なき催告の時効中断/ 一部弁済と時効の中断/ 手形債務の承認による時効中断/ 連帯保証人への請求と時効中断/ 時効の援用権者/ 時効援用の時期/ 時効援用の場所/ 時効の援用と放棄/