債権の二重差押と第三債務者

取引先のAに代金債務を負っていたところ、Aの債権者というNの申立てにより、債権差押命令が送達され、続いて同じくAの債権者Mの申立てにより、同じ債権につき差押命令が送達され、しかも後者には取立命令がついていました。私はNの差押命令によって一切弁済することを禁止されているのですが、Mの取立命令に応じて弁済してもかまわないのでしょうか。
有休動産や不動産に対する二重差押えは、法律で禁止されていますが、債権に対する二重差押えは、これを禁止する規定はありません。しかも、裁判所は、債権差押えの申請があれば、あらかじめ債務者や第三債務者を審尋しないで命令を出すためと、また債権差押えの管轄裁判所は、普通、債務者の住所地、場合によっては第三債務者の住所地ですが、債務者が住所を変更したりすると、そのつど裁判所が異なることがあるため、同一の債権に重ねて差押命令が出される可能性があるわけです。そして第二次以下の差押命令は、配当要求があったものと同一の効力をもつものと解されています。
債権差押命令は、第三債務者に対して債務者に対する支払いの差止めを命じていますので、二重に債権の差押えを受け、特に後の差押えと同時に取立命令がくると、第三債務者は、どのようにしてよいかわからなくなります。

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第三債務者は、債権差押命令の送達をうけると、債務者に対する支払いを禁止されますので、債務者に支払っても、有効に免責を受けたことにならず、差押債権者から取立ての請求をされれば、二重に支払わねばならないこととなります。
また第三債務者は、債権差押命令の送達をうけた後、債務者に対する債権を取得して、これを目指債権として相殺しても、差押債権者には、対抗できません。
このように債権差押命令の送達を受けた第三債務者は、微妙な立場にたたされ、そのうえ、二重、三重に仮差押命令、差押命令、取立命令あるいは転付命令を受けることも決して少なくありません。
債権仮差押えと差押えとが競合する場合その債権につき取立命令を得た差押債権者に対してなされた第三債務者の弁済については、さきに述べた民法四八一条は適用されず、この弁済は、仮差押債権者その他配当にあずかりうるすべての債権者に対しても、弁済としての効力を有するものとして第三債務者を保護した判例もあります。しかし、債権差押え、取立命令後に、別の債権者が同一債権に転付命令を得て執行してきたのに対して弁済をしてしまった第三債務者に、民法四八一条一項により再度の支払いを命じた判例もあります。
このように、二重の債権差押えをうけた場合、第三債務者は、自己の権利として債務額を供託して、役務を免れることができます。第三債務者は、誰が真に弁済受領の権利をもつ債権者であるか、どの割合で配当にあずかれるかなど一切顧慮する必要はなく、供託によりその債務を免れることができるのです。したがって、本問の場合には、あれこれ迷わず供託されることをすすめます。
この供託の方法は、差押えをうけた金額を法務局へ供託しますが、供託書の法令条項欄に「民事訴訟法六二一条」供託物の返付を請求し得べき者の欄に「なし」、供託の原因たる事実欄には、差押えの対象となった債権の内容と差押債権者名、債権額、裁判所名、事件番号、事件名、差押決定送達日を記載します。
そして供託をしたら、供託の事由、供託金額、供託をなした法務局名等を記載した書面を、送達を受けた差押命令を添えて、最初に差押命令を発した裁判所へ届け出なければなりません。
債権者は、すでに差し押えられた債権を重ねて差し押えずに、配当要求によって満足をうることができます。配当要求は、差押債権者が取立命令にもとづいて取立てを終わった旨を裁判所へ届け出るまで、差押命令を発した裁判所へすることができます。裁判所はこの配当要求を、第三債務者、債務者、差押債権者へ通知します。この場合も、第三債務者は、債権の二重差押えについて、さきに述べたのと同様に、供託をしてその責任を免れることができます。
債権差押命令を得るには、「執行力ある正本」を必要としますが、配当要求は、まだ執行力ある正本を獲得していなくても、債権が弁済期にあるかぎりすることができます。執行力ある正本による配当要求は、第三債務者に対する送達によって潜在的差押えの効力を生ずるものとされ、すでになされた差押えが取り消されれば、配当要求の順序に従って差押えの効力を生じます。これに対し執行力ある正本によらない配当要求は、債務者において送達後三日以内にその認否がなされ、債務者が認諾しないときは、三日以内に訴えを起こさなければなりません。
裁判所は、債指差押命令を出す際、第三債務者を零尋しません。そこで差押債権者の申立てがあれば、差押えの対象たる債権の存否等につき、第三債務者の回答を求めます。これを陳述催告命令といい、債権差押命令と同時に送達され、七日以内に、債権認諾の有無、第三者よりの請求、差押えの有無などについての回答を求めます。
第三債務者が、期間内に故意または過失によって、必要な回答をせず、または虚偽不完全な回答をしたときは、債権者がこれらの事項の存否をそのまま信頼したために受けた損害を賠債しなければならなくなります。

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