第二会社への債権保全

取引先のA会社が経営不振におちいっていますが、債務を逃れるため第二会社を作りそうな気配があります。そうなった場合にそなえて債権の保全をはかっておくには、どういう点が法律的に重要でしょうか。また、債権の回収にはどのような注意が必要でしょうか。
会社が営業不振におちいった場合、債権者からの追及を逃れるために第二会社をつくり、その財産をそのままその会社に譲渡ないしは出資することは、しばしば行なわれます。しかし債権者があらかじめこれを察知する ことは、ほとんど不可能ですし、いったん第二会社が設立されると取立てが困難になるので、相手方が営業不振であえいでいるようなときは絶えず注意を払い、い ざというときには財産の差押えができるようにしておくことが大切です。そのためには、あらかじめ物的担保、人的担保をとっておくことも必要ですが、債務会社のめぼしい財産を仮差押えしておくことが大切です。
というのは仮差押えさえしておけば、債務者は仮差押えの目的物件を他に譲渡したり、担保として提供することが禁じられていますから、その財産の名義が新会社に変わっても、目的物件に対し強制執行をなすことができるからです。

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経営不振におちいった債務者が、その債務を逃れるために第二会社を設立することは、明らかに債権者を害する意図の下に会社を設立することになりますから、商法一四一条によって、債権者は債務者および会社を相手に当該会社の設立の取消しの訴えをなすことができます。しかしこの訴えをなすことができるのは、第二会社が合名、合資、有限会社である揚合に限られ株式会社には適用はありませんから、それほど効果はありません。
そこで、次にこのような第二会社が、現物出資や財産引受契約など変態設立手続をとりながら実際には正規の手続を踏まなかったり、会社そのものを、いわゆる預合いの方法で設立し、その後ただちに旧会社の資産の譲渡を受けるという方法がとられたり、また、その法的な主体や役員、従業員などまったく旧会社と変わらないのに名義だけを変えているにすぎない点をとらえて、会社設立無効の訴えや、法人格否認の法理によって、会社の不存在を主張する方法応考えられます。
しかし、形式上第二会社が設立されてしまうと、その会社が当然不存在であるという主張には困難がとらないますし、設立手続の瑕疵について心債権者が立証することはかなり難しいことが予想されます。
債務者が無資力に近く、そのために強制執行をまぬがれるために、自分の財産を架空名義にしたり、他人名義にすることを仮装譲渡といいますが、このような行為は明らかに債権者を騙し、それに損害を及ぼすことを目的とするものですから、詐害行為として債権者はその取消しを主張しその財産を取り戻すことができます。
同じような目的で他人に財産を贈与したり、不当に安い価額で譲渡、賃貸したときはもとより、たとえ正当な価額でも、債務者において債権者を害することを承知のうえでその財産を処分したときにも同様です。ただ受益者または転得者がその事実を知らないときには、債権者はこの法律行為を取り消して財産をとりもどすことはできません。しかし本問のような第二会社の設立は明らかに民法四二四条にいう詐害行為と考えられますから、取消しの対象となるといえます。もっとも、この場合、この取消訴訟が、会社設立自体を詐害行為として取消しの対象とするのか、また財産の出捐行為を対象とするかについては問題がありますが、すでに述べた、会社設立の取消しの規定との関係上、株式会社の場合には設立行為そのものを否認するのではなく、財産の出捐行為を否認し、それを取り戻すと考えるのが妥当でしょう。ただこの場合にも、債務者であるA会社に詐害の意思があることを立証しなければなりません。
なお、第二会社に対する財産の譲渡を、通謀虚偽表示で無効であるとして、旧債務者名義で当該財産を仮差押えをすることも、その証明さえできれば理論的には可能ですが、訴訟技術としては、むしろ詐害行為の取消しを本案として処分禁止の仮処分をする方がより最適だと思われます。

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