根保証人の解約権

Aと継続的売買取引をしているBから、根保証人になってほしいと頼まれたために、それに応じました。ところがその後、Bの資産状態が急に悪化してきたので、保証人となっていることに不安を感じ、Aに対し解約する旨通告しました。これに対しAは、根保証契約は期間の定めのないものであるため永久に保証する義務があり、解約は無効だと主張してきました。このような場合はどうすればよいのでしょうか。
根保証契約には、保証の限度額についてもまた期限についても定めのない場合、いわゆる無限保証と、その双方あるいは一方について定めのある場合、いわゆる有限保証とがありますが、債権者の立場からするならば、このうちの前者は、永久に、しかも無限に、主債務を保証してくれているものと考えるでしょうし、また後者のなかでも、期限の定めのある場合には、債務者の側にいかなる事由が生じようと保証期間内の解約など許されるはずのものではないと考えることでしょう。しかし他方、保証人の立場からするならば、保証契約のほとんどの場合が無償で、しかも義理人情にしばられてやむをえず保証人となるのが普通ですので、たとえ、保証契約でどのようなとりきめがなされていようと、無限に責任を負わされるのはかなわないという気持が生じるのは当然のことと思われ ます。そこで、根保証人の解約をどのような場合に許すかは、両当事者のこのような思惑を考慮しながら利害の妥当な調和点を選びだす、という操作を通じてはじめて可能な、難しい問題だといえます。

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この問題について、従来の判例を整理した学者は、判例が根保証人の解約しうる場合として認めたものに、次の二つの場合があるとしています。そのひとつは、根保証契約後相当の期間経過した場合です。この場合に、根保証人に発生する解約権を、学者は任意解約権とよんでいます。ただ、この解約権は、根保証のすべてについて認められるものではなく、無限保証のケースにかぎって認められている点、注意が肝要です。他のひとつは、主債務者の資産状態、営業状態等が保証契約成立時に比し著しく悪化した場合です。この場合に、根保証人に発生する解約権は、特別解約権とよばれています。この解約権は、任意解約権と異なり、無限保証、有限保証のいかんを問わず根保証のすべてについて認められていると解されています。このように判例の考え方をとらえることは、民法が期間の定めのない継続的債権関係の解約事由として、一定の告知関係を必要とすることなく、各当事者はいつでも将来にむかって解約の申入れをなすことができ、一定の期間の経過により契約は終了するとしている こと、また、信頼関係の破壊等特別の事情がある場合には、期間の定めの有無を問わず解約が認められていることとも対応するものであって、一応正当な分析のしかたであるといえます。
しかし、このような公式的な分類だけで、すべての問題が解決するというわけにはいきません。なぜなら、任意解約権の場合の相当期間とか、特別解約権の場合の資産状態、営業状態等の著しい悪化とは、どの程度に達することを要するのかについて、一義的に決定することが困難であり、場合によっては、両者あいまって解約権の発生に結びつくこともなしとしないからです。近年の判例に、期限の定めのない継続的保証契約は保証人の主債務者に対する信頼関係が害されるに至った等保証人として解約申入れをするにつき相当な理由がある場合においては、解約により相手方が信義則上看過しえない損害をこうむるとかの特段の事情ある場合を除き、一方的にこれを解約しうるものと解するを相当とすると判示したものがありますが、これからも明らかなように、判例は、保証人と債権者の双方の利益とか立場を較量し、各場合の具体的諸事情に応じて、妥当な解決をはかっているとみることができます。
以上を本問についてあてはめて考えてみると、根保証契約が数年続いていることおよびBの資産状態が急激に悪化したことなどの事情がうかがえますから、解約申入れについて相当な理由があるように思われます。したがって、解約申入れは有効だと思われます。

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