限定承認と保全

Aに融資していましたが、Aが亡くなり、相読人のBCは家庭裁判所で限定承認の手続をとったようです。限定承認を否認して相続人から返済させるには、どういう点につき調査して手を打てばよいでしょうか。限定承認の結果が動かせないとした場合、預金と相殺したり担保を実行してもよいものなのでしょうか。
限定承認とは、相続人が相続を承認はしますが、被相続人のプラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切引き受けるのではなく、被相続人のプラスの財産の限度でしかその借金の責任を引き受けないという内容の相続のことです。例えば、被相続人が100万円の財産と同時に、それ以上の借金を残しているかもしれないという場合に、相続人が限定承認をしたとします。後で借金が200万円あるこ とが判明しますと、相続人は200万円の借金全部を払う必要はなく、100万円の財産で借金を清算してもらえることになります。したがって、被相読人の債権者にとっては、借金を全部返してもらえないという不利な結果となります。
しかし、限定承認をするためには、相続人はまず相続財産の財産目録を作り、民法九一五条一項に定められた期間内に、それを家庭裁判所に提出して、限定承認をすることを申し出、審判をうけなければならないし、相続人の全部が共同してしなければなりません。

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相続人が限定承認すると、被相続人の債権者は不利益をうけることになるために、どのようにしてその債権を保全したらよいかということが問題となります。このためには、債権者が限定承認の効力を否認して単純承認(被相続人のプラス、マイナスの財産を全部相続する)にするということが考えられます。
まず、限定承認の申立ては一定の期間内になされなければなりませんので、この点を調べることが必要です。しかし、その期間は相続人が相続の開始を知ったときから三ヵ月以内ということにかっていますので、債権者として相続人が相続開始をいつ知ったかということをはっきりさせねばなりませんし、実際にはむずかしいことです。
そこで限定承認を否認する他の方法が問題となりますが、民法九二一条一号には、相続人が相続財産の全部または一部を処分したときには単純承認になると定めています。これは、限定承認前に処分した揚合の規定であって限定承認後の処分には関係ありません。なお、共同相続の場合にその一人が処分したとき、その者は単純承認したものとみなされますが、そのために他の共同相続人も限定承認できなくなるかどうかについては説が分かれています。
さらに、限定承認の前後を問わず相続人が相続財産について一定の不都合な行為をした場合にも単純承認となります。つまり、相続財産を隠匿した、私に費消したこと、悪意で財産目録に記載しなかった場合です。この悪意とは、たんに債権者または相続財産があることを知っていたというだけではなく目録から落して債権者の追及を逃れるという意思が必要と解されます。なお、同相続人が限定承認した後に、一部の者がこのような行為をしたときは、限定承認はなお効力をもち、不正行為をした者だけが特に責任を負わねばなりません。
限定承認をした者は、限定承認の申立てが受理された日から五日以内に、相続人が数人ある揚合には、その中から選ばれた相続財産管理人が管理人として選任されてから10日以内に相続債権者などが一定期間内に申し出るように公告しなければなりません。そして右の期間内は、相続人は債権者に弁済を拒むことができます。この期間が経過した場合には、期間内に申し出た債権者にまず弁済がなされます。
この債権者に対する弁済は、総借金額よりプラスの財産が少ないときは、債権者それぞれの債権額に応じて割合的弁 済をするわけですが、これでは債権者は債権全額を弁済してもらえないことになります。ただ、抵当権、質権など他の債権者に優先して弁済をうける権利をもっている債権者はその優先権の効力が及ぶ限度で優先弁済をうけることができます。ただ抵当権の場合には、限定承認以前に登記をしておかねばならず、また限定承認後には登記を請求することができません。相殺についても、それは抵当権、質権と同様に債権担保の機能を果たしますので、同様に考えてかまいません。なお問題は、債権者の債権申出期間中は限定承認者は弁済を拒絶することができるわけですが、例えば抵当権をもった債権者はこの期間中でも抵当権を実行して優先弁済をうけることができるかということです。判例にはそれを認めるものがありますし、これらの債権者は優先的取扱いをうけ、相続財産の額には無関係に目的物の上に独占的な権利を行使することができると考えられるので、認めてかまいません。

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