履行引受による保全と回収

履行引受けとか履行の引受けとは、なんのために行なわれる契約でしょうか。そして債権の回収、保全という観点からは、どういう意義があるのでしょうか。また、債務引受けとは、どの点が最も大きな違いになるのでしょうか。
例えば、AがBから借金をしている場合において、CがAに対しその借金を払ってやるうと約束することです。債務引受けも、債務者と引受人との契約で行なえますが、履行引受けがこの形しかないのに対して、債務引受けのほうは債権者、債務者、引受人の三者が契約することによっても、また債権者と引受人の契約によっても行なわれます。とりわけ、違いがはっきり出てくるのは、履行引受けの場合なら原則として債権者Bが引受人Cに対して払えと要求できないけれども、債務引受けでは直接引受人に請求できるという点です。履行引受においては、たとえ債権者が引受人に対し、自分は君たち二人が返済の件につき引受けの約束をしているのだから、それにもとづいて請求すると申し出てもだめだとされています。
では、なぜ、債務者Aとの間では代わりに返してやる約束をするが債権者Bに対しては義務を負わない、といったふうの中途半端な契約が行なわれるのでしょうか。学説では、慈善、謝恩、返礼などの目的から債務者の代わりに弁済することを約束した場合は履行引受けになるのだと説明されていますが、裁判例などは、お返しだとみるにしても情誼にもとづいたものではなくて、借金をまけてくれるなら代わりに履行を引き受けようと約束したケースです。とすると、学説がたてるこのような基準では、実態が必ずしも明らかにならないといえます。
以上のように、履行引受けは原則として債権者が引受人に直接請求する権利をもたないものであり、債権者としてはあまり意味がない契約です。したがって、貸付の実務書もこれを問題にするのは稀であり、ときおり債権回収のなかで、債務引受けと関連してごく簡単にふれられる程度でしかありません。
しかし、まったく無意味、無関係というわけではありません。つまり、判例によると、もしACお互いの間でBに直接権利を与えようとする意思があれば、いわゆる第三者のためにする契約として、BはCに通告をしたうえで請求することができます。したがって債権者側としては、債務者と他人とのあいだにそういう話しあいがあることを察知したら、よく調べてみるだけの値打ちはあります。特に、債務者Aの返済資力があやしくなった場合などにおいて、資力のある第三者に請求できることとなるのは大きな強みです。もっとも、このごとく債権者に直接Cに対する権利を与える場合は異例、例外だとみられており、特別の理由がないかぎり、そういう内容だと推定、つまり反対の証拠が出されなければ第三者のためにする契約だと認定すべきではありません。
通常の、つまり免責的な債務引受けならば、もとからの債務者は債務関係から脱退してしまいますが、債権者が直接引受人に請求できる趣旨の履行引受けでは、債務者も引受人とならんで責任を負い、そうでないときには、債権者がこのような権利をもちません。要するに、債務者と履行引受人とが、いわゆる重畳的債務引受けの関係に立たないかぎり、第三者のためにする契約だとは認められないわけです。

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