手形書替え

Aにお金を貸し、Aが振り出した約束手形を預かっています。その手形には、Bが保証人として押印しています。期日になってもAがお金を返してこないので催促したところ、手形は書き替えて新しい手形にするからといってきました。この場合どんな注意をしたらよいでしょうか。
手形の支払いを延期するために、当事者の合意によって満期を延長した新しい手形を振り出すことを、手形書替えといいます。支払いの延期は、手形を書き替えなくとも、当事者間の約束だけでできますが、もし満期以前にその手形が善意の第三者に譲渡されてしまうと、手形債務者は支払延期の約束があることを主張して支払拒絶をすることはできません。そこで、すべての者に支払延期の効力を生じさせるために、手形そのものの上で満期を変更しておくことが必要になるわけです。
手形の書替えには、当事者の合意によって新手形と引替えに旧手形を回収する場合 と、旧手形を回収せず、新旧二進の手形を債権者の手もとにとどめておく場合と、二つの場合があります。

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新手形と引替えに旧手形を回収する場合には、回収のときに旧手形は効力を失い、新しい手形上の権利だけが残ります。本問の場合には、旧手形にBの手形保証がとってあったのですが、新手形にもBの保証をとらないかぎり、手形債務は無保証とたってしまいますから、注意が必要です。
ところで、手形保証以外の保証や担保が旧手形についていた場合には、手形書替えによってそれらの担保や保証はどうなるで しょうか。
判例も学説も、理由づけはまちまちですが、旧手形につけられた担保や保証は新手形についても存続することを認めています。これは、手形書替えの場合、新手形と旧手形とは、経済的、実質的には同一であることが多いからだと考えられます。もっとも、債権者としては、保証や担保の存続について関係者の間で合意し、明確な証拠を残しておくべきです。
旧手形を返す約束がありながら返されない場合には、手形が返された場合と同様、旧手形債権は消滅したと考えられます。ただし、旧手形が期限前に善意の第三者に渡ったときには、手形債務者はその者に対して手形上の責任を負わなければなりません。
当事者の約束で、はじめから新旧二通の手形を債権者の手もとにとどめておく ようにして手形の書替えが行なわれる場合もあります。例えば本問のケースで保証人Bの署名が新手形についてとれない場合、手形債務を無担保にしないためには新旧二通の手形を持っていなければなりません。この場合には、当事者の意思から考えて、新旧二つの手形債務が併存すること になります。旧手形債務についていた担保がそのまま新手形債務について存続することは当然です。この場合、旧手形に新手形上の署名者以外の者が署名していれば、その者に対しては旧手形の満期を基準として旧手形で権利を行使しなくてはなりませんが、新旧両方の手形に署名している者に対しては、どちらの手形で権利を行使してもよいのです。もちろん、旧手形の満期が到来しているからといって、新手形の満期前に旧手形で請求すれば、債務者は当事者間では、手形書替えによって期限は延長されていると主張して支払いを拒むことができます。ただ、善意の第三者に 対してはこのような主張は許されないので、旧手形には「満期平成  年 月 日の新手形と書替済」というような文言を記載して、書替済の手形であることを明らかにしておくのがよいと思われます。
なお、債務者に請求するときには、新旧二通の手形を呈示して交付しないかぎり、債務者に支払いを拒まれます。そうでなければ、所待人の手もとに残った手形が第三者に譲渡されることによって債務者は二重払いを強制される危険があるからです。

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