特約による事前求償権

債務者の代わりに弁済したときは、求償権ないし求償債権がひろく認められてますが、これを保全するために、民法四六〇条で定められている事由がなくても特約で事前求償を承諾させておくことは、どのような場合および範囲において有効でしょうか。
民法四六〇条は、保証人が、主たる債務者の 委託をうけて保証した場合は、受託者としての保証人は、その委任事務を処理するについて費用を要するとき、委任者である主たる債務者に対してその前払いを請求することになりますが、保証人が免責行為をするについて必要な費用をいつでも前払請求できるとするのは保証の趣旨を無意味なものとするものでもあるため、保証人の免責行為前の求償権を一定の場合に限って例外的に認めることにしたものです。民法四六〇条の規定する場合とは、次の三つです。
主たる債務者が破産の宣告をうけ、かつ債権者がその財団の配当に加入しないとき。保証人は求償権によって財団の配当に加入できます。
債務が弁済期にあるとき。この弁済期は保証契約成立時の弁済期が標準になります。
債務の弁済期が不確実であって、かつその最長期をも確定することができない場合において、保証契約の後、10年を経過したとき。このような揚合には保証関係を免れうる時期が不明確であり、また将来、主たる債務者の資力に変動を来たして、満足に求償をうけることができなくなるかも知れないからです。これ以外に保証人が過失なくして債権者に弁済すべき裁判の言渡しをうけたときも、理論上事前に求償をなしうる場合に含めています。
事前求償をなしうる範囲は、求償の当時において保証人の負担すべき範囲であり、元本、すでに発生した利息、遅延利息、免責のためさけることができないことが確定した費用、その他免責のため蒙ることの確定した損害額です。

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銀行は支払承諾債務を負担する場合、債務者が原債務を履行しなければ代わってその債務を履行することになりその結果求償権を取得するので、その取引先に対する求償権の行使を確実、容易にするため種々の特約をしています。しかし銀 行が支払承諾債務の履行前であっても、求質権を行使しうるのは、特約のないかぎり民法四六〇条所定の事由の発生した場合においてです。そこで、実務上はできるかぎり求償権の事前行使を確保するために、支払承諾約定書でその要件を緩和しようとします。これはまた取引先に一定の事態が生じたとき、事前求償権を自働債権とする相殺が可能となるように配慮されたものです。
以下に、支払承諾約定書の事前求償条項をあげておきます。
当然求償条項。次のような事由が生じたときは銀行から通知、催告がなくても、事前求償権が発生します。仮差押え、差押えもしくは競売の申請または破 産、和議開始、会社整理開始もしくは会社更生手続開始の申立てがあったとき、または清算に入ったとき。租税公課を滞納して督促を受けたとき、または保全差押えを受けたとき。支払いを停止したとき。手形交換所の取引停止処分があったとき。銀行に対する債務の一つでも期限に弁済しなかったとき。
請求による事前求償条項。銀行との取引約定の一にでも違反したとき。保証人が七条一項各号の一にでも該当したとき。その他債権保全のため必要と認められるとき。
事前求償債務の範囲は、事前求償時現在において、銀行が取引先債権者に対し保証債務の履行として弁済すべき金額です。つまり、主債務の残存元本およびそれに伴う利息、損害金です。
代理貸付というのは、普通銀行などの一般金融機関が、中小企業金融公庫、住宅金融公庫、日本長期信用銀行、日本不動産銀行などの特殊金融機関との間で業務委託、契約を結んで、これら委託金融機関の名で、貸付事務を行なうものであって、貸付事務の委任としての性質を有します。したがって受託金融機関は貸付金の回収、管理について善管注意義務を負います。またそのほ かに、業務委託契約にもとづいて元利金の回収について一定割合の保証責任を負う場合が多いのです。この保証責任を負う部分は支払承諾となります。貸付先が返済を怠ると受託金融機関は保証した範囲で立替弁済をし、その後、貸付先に求償できます。したがって銀行は求償権を確保しようとします。事前求償権の行使についての特約がないかぎり、保証債務の履行以前に求償権の行使ができるのは、債務者が破産宣告を受けたのに主たる債権者の公庫等で配当加入をしなかったとき、代理貸付の期日が到来したとき、期限の定めがない債権で10年以上たったとき、という民法四六〇条所定の範囲内です。ただ実務上は、この三つの場合以外に、求償権の事前行使についての特約を貸付先との間で締結しておけば、代理貸付における求償権の事前行使は可能としています。公庫等の代理貸付の書類とは別個に、支払承諾約定書または保証委託書等を貸出先と銀行との間で直接契約することになり、その内容は、銀行取引約定書の期限利益喪失条項に列記されている事項をあげて、これらの場合においては、保証債務の履行前でも、あらかじめ求償権を行使できるとしていればよいと考えられます。

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