強制執行について

 強制執行とは借主が約束までにかりた金を返さない場合、国がその国家権力をもって借主から貸金額をとり戻してくれることです。したがって貸主は訴訟に勝つたからといって勝手に相手方の財産を処分したり、貸金に相当する品物をとりあげるといったことはできないのです。本人に代わって国家がそれをやってくれるのです。

スポンサーリンク

 そこで債権者、貸主は強制執行を借主にかけようと思ったら判決などによる債務名義を司法機関に提出して、執行のための申したてをし、強制手つづきをとることです。
 債務名義とは何かというと、確定判決、和解調書、認諾調書、仮執行の宣言を付した判決、仮執行の宣言をつけた支払い命令などです。
 ところで手形や私製証書は債務名義になるかというと、これはなりません。これによって強制執行をかけることはできないのです。なぜなら、このようなものは裁判に訴えでて判決をとりつけるとか、または調停にかけて正式の調停調書に書きこまれたものでないと債務名義としての価値がないからです。したがって手形や私製証書の場合は仮差押えをする以外に方法がないのです。
 担保をとっている場合にも、それに登記の手続きがなされているときは、貸主はそれをすぐ競売にかけることができるから債務名義にはなりません。
 債務名義にならないものはのぞいて、債務名義が成立しているものについては、たとえ債権者が死んでしまったようなときでも、その権利を相続する人または権利を引受けた人は、相手方にたいして強制執行をかけることができるのです。逆に債務者が死んでしまった場合であっても債権者、またはその権利を受けついだ人はその借金を相続した人にたいして強制執行をかけることができるのです。
 強制執行によって差押えできるものは不動産、金銭債権、著作権、特許権、地上権、などですが、できないものは次のようなものです。

 (1) 衣服、寝具および炊事用具。つまり日常生活にとって欠くべからざるもの。しかし、相手が差押えをすることを承知したときは、このかぎりではありません。
 (2) 借主およびその家族が生きるために必要な三ヵ月分の食料。
 (3) 技術者、労務者、農業人、助産婦、神職、僧侶などの場合は、その仕事になくてはならない器具、衣服、種子、家畜など、差押えできません。
 (4) 薬局などの場合は、薬を配合したり、調合したりする器具、薬品などは差押えできない。
 (5) 勲章や名誉ある証標も差押えできない。
 (6) 実印やその執仕事のうえで必要な印も差押えできない。
 (7) 神体や仏像、そのほか礼拝のために必要なものについても差押えできない。
 (8) 系譜も差押えできない。
 (9) 借主およびその親族がまだ発表していない発明に関する物、またはまだ世間に発表されていない著作上の原稿なども差押えは不可能です。
 (10) 借主およびその親族が学校でつかっている書籍などについてもこれを差押えすることはゆるされないのです。

 強制執行をかけて差押えするには債務名義さえあればよいことになっているとはいえ、実際には形式的であっても執行文をつけることになっています。
 執行文とは何かといえば、強制執行をかけてもよいという、いわば国家のみとめた証書のようなものです。
 この執行文には付記の項目があり、その付記は判決の場合だったら第一審裁判所、公正証書をつくった公証人、また和解や調停の証書の場合なら調書を書いた裁判所の書記官が、それぞれ書くことになっています。そして執行文は、判決の正本のおわりに付記することになっているのです。
 債務名義は、あらかじめ債主にそれを送って、その証明書を受けとっておくことです。
 また、不動産を差押えるときには、それを競売するための申請書を出すときに、不動産登記謄本や土地または建物登記簿謄本と公課証明書を添えることになっているから前もってその準備もしておかなければならないのです。

お金を借りる!

素人だが貸金をしたい/ 貸すか貸さないか迷っている場合/ 抵当物権は自由に処分してもよいか/ 農地を抵当にとるときには/ 借用証書なしの貸金を取立てるには/ 時効が迫っている亡父の貸金がわかった場合/ 貸金の回収はどのようにしたらよいのか/ 法的に貸金を取立てるには/ 和解について/ 仮差押と仮処分/ 差押するときは動産と不動産のどちらがよいか/ 強制執行について/