手形貸付の書替

手形の書替とは、手形の支払を延期するために当事者の合意によって手形の満期日を変更した新手形を振り出すことをいいます。
手形の書替は主に銀行取引においては、手形貸付の場合の支払延期のために行たわれるといわれています。支払期目の延期が行なわれる場合は、貸付時の約定に基づいて行なわれる場合と、貸付後の諸種の事情から、支払期日に弁済することができなくなり、支払猶予のために行なわれる場合とがあります。貸付時の約定に基づいて行なわれる場合は、貸付時に弁済期より短期の手形を振り出し、手形期日ごとに書替を行なって最後の弁済期に元金の弁済を実行することを特約するものですが、このような書替の実益は、踊り利息の徴求、書替時ごとの債務者に対する心理的圧迫といった点で債権者に利点があります。
支払の延期自体は手形外で当事者同士、その旨、特約することによっても行なうことは可能ですが、そのような特約は手形債権上、当事者間の人的抗弁として間題となるにすぎず、もし当該手形が満期前に善意の第三者に渡り、その者から支払請求があれば債務者はそれを拒むことができず、二重払等の危検があります。したがって支払延期を全ての者に対抗できるものとするには手形記載事項の変更、手形書替を行なうほかはありません。

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手形書替の種類
同額書替 手形の支払期日に旧手形金額と同額をもって新手形金額とする書替で、通常はこの書替になります。
増額書替 手形の支払期日に貸金を増額して貸付を行なうために、または延滞利息を元本に加えて書替するものです。
滅額書替 手形期日に貸金の一部を弁済して、手形金額を滅額して書替するものです。
合併書替 二つの手形貸付を合併して書替するものです。
分割書替 一つの手形貸付を二つに分割して書替するものです。

手形書替による法律関係の変動は消費貸借関係と手形関係について間題となりますが、それは、書替の法的性質をどう考えるかと密接に関係します。
手形書替の法的性質については、支払延期説、更改説、代物弁済説があります。支払延期説では新手形の振出は債務の支払を延期するために行なわれるものであるために、旧手形は失効し、旧手形上の権利は同一性を維待しつつ、新手形上に移行します。消費貸借債権も同一性を失うことなく存続し、それについての担保、保証も存続します。
更改説では旧手形債権は消滅し、新手形債権が成立します。旧手形について存在した担保等は消滅するために、それを新手形にも存続させるには特別の合意が必要です。したがって保証人等の改めての合意が得られない場合は、手形所持人は不利となりますが、銀行取引では銀行取引約定書により、担保は根担保とされるので、担保は新手形についても存続することになります。
更改により旧債務が消滅し新債務が成立した時は、当初の消費貸借債権の消長については、通常、当事者はそれを存続させる意思を有するものと推測され、手形貸付において振り出された手形は実質上、担保のためと考えられるために、原則として債権の実質的満足を受けないかぎり、旧手形の消滅は消費貸借債権には影響しないといえます。しかし当事者が消費貸借債務を消滅させる意思をもって手形を振り出したときは更改により消費貸借債権は消滅します。そのいずれかは当事者の意思によることとなります。
代物弁済説では、旧手形債務は消滅し、新手形債務が成立するために、旧手形についての人的抗弁は新手形に及びませんが、両手形債務は実質的に同一であると考えられるので、旧手形債務についての保証等は新手形についても実質的に存続するといえます。そして当初、担保を設定した当事者間には手形書替による新債務についても担保権を成立させようとする合意を推測できるために、保証の存続を認めることができます。当初の消費貸借については、原則として影響しないというべきであることは更改説と同じになりますが、当事者が代物弁済により、消費貸借債権を消滅させる意思を有するときは、新手形振出により消滅するものというぺきです。このように当事者の意思により旧手形債務についての保証や消費貸借債権の消長が決まるということになれば、手形貸付で証書を伴うものでない限り、その点についての紛争を避げるためには当事者間で保証や消費貸借の存続につき念証等の交付を行なっておくことが必要となります。
書替の法的性質についてどのような見解によっても、原則として当初の消費貸借債権は存続します。ただ、更改説、代物弁済説では、その消長は当事者の意思により決定されることになることは前述のとおりです。
手形債権は旧手形を債務者が回収するか否かで異なりますが、旧手形を回収するか否かは当事者の自由です。
債務者が旧手形を回収する場合は判例は当初、旧手形の回取の有無は書替の法的性質には関係なく、新手形の振出は支払延期のために行なわれるものであるために、書替後も手形債務の同一性は失われず、旧手形上の権利は同一性を維持して新手形上に移行しますが、当事者の特約により旧手形が書替により消減されるときは、書替の法的性質は更改としていましたが、最高裁は、書替は旧手形を現実に回収して発行する等、特段の事情のないかぎり、単に旧債務の支払を延期する趣旨と解するのが相当であるとしています。
有力なる学説は旧手形債務が消滅するのは代物弁済によるものであるとしています。ただし、旧債務を消滅させるために新手形が振り出された場合、それを更改とみると、新債務の成立は旧債務の有効な存在を前提としていますが、そのような結果は手形行為の無因性からは肯定できません。
債務者が旧手形を回収しない場合は前述のように判例では、手形書替の法的性質は更改であるために新旧両手形債務に同一性はないとしていましたが、手形の要件の同一性の有無により、両手形債務の同一性を判断するようになり、最高裁は書替は手形の支払を延期するためのもので、回収が行なわれない場合は両手形債務は同一性を有するとしています。

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