金銭貸借と金銭預託

寄託とは、民法六五七条で定めているとおり、当事者の一方のAが、相手方のBのために保管することを約して、その目的物を受け取ることによって成立する契約です。Bの物を預かることによってAは目的物に対する占有を取得しますが、所有権、処分権は依然としてBにあり、Aはかかる権利を持ちません。そして寄託契約が終了すると同時に、預かった物をBに返還するのが原則です。
代替物つまり穀物、石油などの寄託には、受寄者Aが多くの人から同種、同品等の物を受け取って、これらを混合して保管し、特定の預け主に対しては、寄託されたのと同量の物を返還すればよい、という類型があります。こういう寄託方法においては、先に預けた物と物理的に同じ物が返ってくるとは限りません。しかし保管のための場所と労力を節約することができ、したがって保管料も安くなるために、物の個性を問いさえしなければ、当事者双方にとって有利です。これを混蔵寄託といい、日本法に直接の現定はありませんが、有効なものと認められています。

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混蔵寄託においても、Aは所有権、処分権を取得しません。かといってBの預けた物はB他らの預けた物と混然一体となるために、Bの所有権もその対象が定かでなくなります。そこで、混蔵寄託における所有権については、混合された物全部が、寄託した数量に応じた持分による寄託者全員の共有になると説明されます。
混蔵寄託よりさらに物の個性が没却されると、次の消費寄託になります。消費寄託においては、受寄者Aは、目的物をそのまま保管して後日その物自体を寄託者Bに返還するのでなく、寄託が実行された時に所有権がBからAに移り、Aは目的物を一旦消費することができ、のちに同種、同等、同量の物をBに返還すれば足ります。混蔵寄託では、多数の人の預かり物を混合はしても、とにかく物自体の保管を続けなければなりません。この点で両者は根本的に異なります。
代替物でさえあれば、米や薪炭のたぐいも消費寄託の目的物と成り得ますが、消費貸借と同じく、今日現実に社会的、経済的に重要な作用を営むのは、もっぱら金銭を目的とした寄託です。
金銭の消費寄託は、寄託者Bの有した目的物の価値を受寄者Aが利用する点で、消費貸借と酷似しますが、完全に同一視されてはいません。例えば銀行を一方当事者とする金銭の授受についても、預金は消費寄託、貸付は消費貸借というように、区別されます。
消費貸借は、借主の需要が契機となって契約にまで至るのが普通です。無利息の消費貸借は、もっぱら借主の利益を充たすものであることが顕著です。これに対して消費寄託は、Bが自ら金銭を保有することに伴う盗難、火災等の危険を避けるために、あるいは有利な運用を図るために、Aに保管を委託するのです。したがって消費寄託もやはり寄託たる性質を失いません。
通常の寄託には委任の規定が多く準用されるのに対して、消費寄託には、返還時期の点を除き、消費貸借の規定が全面的に準用される返還時期については、特約がない場合、消費貸借におけるような相当の期間を定めた催告を要さず、BはAに対しいつでも返還を請求できます。これも、Bのための保管の要素を重視するからです。法的性質が消費寄託として構成される預金については、その種類に応じて、それぞれの約款に、返還時期の点も含めた詳細な特約案項が定められているために、民法六六六条但書の登場する余地は少なくなっています。

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