買戻約款付売買と金銭貸借

物を売買するに際して、その後一定期間内に売主が売買代価を返還すれば、売買契約を解除して目的物を取り戻すことができる約束をすることがあります。このような解除権を保留した売買を、買戻し約款付売買といいます。一定期間内に代価の提供がなければ、目的物は確定的に買主の所有となります。つまり目的物を担保に、買主から売主に対し、売買代価に当額を融資したのと同じ機能を果たします。そのために、売買とはいいながら、実質的には金銭貸借に伴う債権担保の一種と考えられています。

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買戻特約の中には、前記のような金融を得る手段としてだけでなく、社会、産業政策上の見地から付せられるものもあります。例えば住宅公団による宅地、住宅の分譲や地域振興整備公団、地方開発公社による工業団地の分譲等においては、買主が売買契約中の条件に違反して、短期間内に転売したり、他の用途に流用したりした場合は、売主たる公団等が物件を取り戻す権利を留保する買戻特約を付けます。
買戻については、民法五七九条以下にかなり詳細な規定があります。この規定に伴わない買戻特約は、全面的に無効か、一部無効で民法の基準まで修正されるか、債権契約として当事者間では有効か、様々な間題がありますが、民法による制約のあらましは次のようになっています。
目的物は不動産に限る。動産を対象とした買戻も有り得ますが、五七九条以下の規定は適用されません。
売買契約と同時に買戻の特約をしなければならない。
買戻のために売主から買主に返還すべき金額は、売買代金と契約費用の範囲内に限る。利息を付する合意は有効です。
買戻までの期間は10年を超えることができず、一旦定めた期間はそれが10年より短くても後日伸長することができません。買戻期間を契約で定めなかったときは、5年とされます。
売買契約に基づく移転登記と同時に買戻の特約を登記しなければ第三者に対抗できず、買戻特約の登記があれば、その後に登記された第三取得者や、買主に対する抵当権者に対抗することができ、買戻しが実行されるとこれらの者は権利を失うことになります。
売主が買戻権を行使するには、買戻の意思表示だげでなく、代金および契約費用を現実に買主に提供しなければなりません。
買戻特約と現象的に酷似したものに再売買の予約があります。これは、BからAに物件を売渡すに際して、将来AからBに再度売渡すことを予約するものです。形式的にみるかぎり第二の売買AからBは、民法五五六条に基づく単純な予約であって、第一の売買BからAと無関係です。そのために第一の売買の解除という形で行なわれる買戻とちがって、五七九条以下の制約を受けない、というよりも、窮屈にすぎる民法の規定を免れようとして、買戻とは別に再売買の予約という制度が生まれたのです。再売買の予約をみると、次のとおりです。
目的物は動産でもかまいませんが、実質的に意味のあるのは不動産です。第一の売買と同時に再売買の予約をなす必要はなく、時を経た後にしてもかまいません。第二の売買の代金は第一の売買の代金と同額である必要はなく、再売買時の時価と定めることもできます。第二の売買を行なうまでの期間につき、五八〇条の適用はありませんが、一六七条一項によって、予約完結権は10年の消滅時効にかかります。
所有権移転請求権保全の仮登記が可能であり、これによって潜在的な対抗要件ができます。
予約完結権の行使にあたって代金の提供は必要でなく、完結の意思表示だけでかまいませんが、代金の現実の提供を要件とする合意も有効であり、実際にはそれが原則です。
こうしてみると、買戻も再売買の予約も、買主のなす出捐は物件の売買代金であって、買主と売主との間に消費貸借上の債権債務関係が発生する余地はありません。したがって、金銭貸借とは理論上結びつきませんが、実質的な機能に着目すると、いずれも物的担保にほかならず、担保であることを肯定したときは、当然被担保債権の存在も認めなければなりません。その被担保債権は、通例では買主から売主に対して金銭を貸し付けたことから生じた債権です。
買戻特約は本登記であって仮登記ではありませんが、所有権移転型の担保物権という点では、近時理論的検討の目覚ましい仮登記担保の一環に組み込まれるのが妥当です。

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