保全執行の取消し

保全執行の取消は、どのような方法でなされるのでしょうか。建物に対する債務者の占有を解いて執行官に保管させ、債権者に使用を許す旨の仮処分の執行後に執行取消の申立てがあった場合、いわゆる逆執行をすることが許されるのでしょうか。保全執行の取消は、すでになされた保全執行処分の除去を目的としてなされるものであり、執行の効果あるいは執行によって現出された状態を原状に回復させる手続です。保全執行の取消の方法については、現行法上その通則的規定が設けられていないため実務上、申立人が債権者か債務者か、取消の対象がどのような種類の執行かにより、異なる取扱いがなされており、理論的にも事柄の重要性に比して不毛の分野です。強制執行法の改正にあたって考慮されるぺきです。

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債権者からの申立てによるもの、保全処分申請の取下げを取消原因とする場合、抹消登記、登録を要するものは、執行取消の申立てにもとづき、裁判所書記官の発付する執行申立取下証明書を登記原因として登記嘱託をなし、また、債権等に関する執行に対するものは執行取消の申立てにもとづき、執行裁判所の発付する執行取消決定を第三債務者に送達します。執行取消申立てまたは執行申立取下げを取消原因とする場合、執行官の執行に対するものは、執行官に対し執行解放の申請をすればよく、抹消登記、登録を要するものは、執行申立取下証明書を登記原因として登記嘱託をなし、また、債権等に関する執行に対するものは、保全処分申請取下げの場合と同じです。
債務者からの申立てによるもの、保全処分申請が取り下げられたが、債権者が執行取消しの手続をとらない場合、債務者が執行解放を求める方法については、学説、実務の取扱いが統一されていません。民訴法七五四条一項を類推適用して、申請取下げを理由として執行裁判所に対し執行取消決定を求める方法によるべぎであるとする見解と、債務者は取下書副本を執行機関に提出して執行の取消を求めることができるとの見解とが有力です。なお、東京地方裁判所の取扱いは、執行官の執行力に対するものは、申請取下証明書を民訴法五五○条一号書面に準じて執行の解放をなし、抹消登記、登録を要するものは、執行取消の申立てにもとづき執行裁判所が執行取消決定をしたうえで登記を嘱託することとされています。
解放金供託を取消原因とする場合、その供託証明書をもって民訴法五五○条三号の書面といえるかどうか争いがありますが、実務は、執行機関のいかんにかかわらず執行取消の申立てにもとづき執行裁判所が執行取消決定をしたうえで、執行行為の種類に応じて所要の手続をしています。
保全命令の取消判決を取消原因とする場合、執行官の執行に対するものは、取消判決を民訴法五五○条一号の書面として執行解放手続をなせばよく、抹消登記、登録を要するものは、執行取消を求める上申書にもとづき、執行裁判所が取消判決正本または登記嘱託害副本を登記原因証書として登記嘱託をなし、また、債権等に関する執行に対するものは、執行取消しの申立てにもとづき、執行裁判所が発付する執行取消決定を第三債務者に送達します。執行解放の裁判上の和解を取消原困とする場合、執行官の執行に対するものは、和解調書を民訴法五五○条一号の書面に準じて執行解放手続をなせばよく、抹消登記、登録を要するものは、執行取消の申立てにもとづき、執行裁判所の執行取消決定により嘱託します。
建物の引渡請求権を保全するため、執行官保管、債権者使用許可の占有移転禁止仮処分が発令された場合、その執行は、債権者の申立てにより、執行官が、債務者から建物の占有を取り上げて債権者の入居を許可してこれを使用させたうえ、当該建物を執行宮において保管中であるが債権者にかぎり使用を許した旨の記載のある公示書を貼付する方法によってなされます。この執行は、建物を執行官が債務者から現実に取り上げる点において、民訴法五六六条にもとづくものではなく、同法七三一条一項前段による執行を準用しているものというべきであって執行官がみずから建物の占有を取得した時点で、被保全権利の本執行の手続における過程の執行の一部を終了したものと考えられます。そして、債権者の使用を許可する命令部分は、執行官保管命令部分を含めて、本執行以外の執行といわざるをえませんが、仮処分命令においては民訴法所定の強制執行に関する規定のすべてが仮処分の方法として準用されるものと解しうるので各命令部分は、民訴法七一二条あるいは同法五六六条二項の準用による執行指揮監督のための命令とみるのが相当です。この種仮処分の執行がこのようなものである以上、債務者としては、執行解放手続が、公示の除去および保管物の現実の引渡しによる返還の方法によってなされ、関係者が不在のため現場解放ができないときは通知解放の方法によってなされなければ、その目的を達しえないので執行官が執行取消の手続として債権者から建物の占有を取り上げて債務者にこれを取得させるいわゆる逆執行をなすことを要求せざるをえません。しかしながら、このような逆執行が、民訴法五五一条あるいは同法一九八条二項の類推適用によって許されるのかについては、従来疑問とする向きがあって、執行実務も消極の運用がなされています。執行機関により執行処分の効果を除去しうる時的範囲は、執行開始後その終了までの間とされているため、係争物に関する仮処分にあっては、本執行移行時を基準とすることは明らかですが、仮の地位を定める仮処分は、執行の方法によって個別的に決するほかなく、前記のような執行実務は、執行官保管、債権者使用許可の仮処分のごときいわゆる断行的仮処分にあっては、執行官が債権者に対し目的物を使用させるため占有を移した時点で執行が終了したものと解する帰結にほかなりません。しかし、この断行的仮処分執行の場合は執行官が、目的物の占有を解き自己の保管に移し、その表示をしたうえ債権者に引き渡しても、執行の効力は存続し、その存続を表示する執行処分の外形は残っておりまた、これを見方をかえていえば、民訴法七三一条の本執行の一部の執行が終了しただけで、執行官保管、債権者使用許可という執行指揮監督のための命令による執行は存続しているために、執行は終了していないものというべきです。この点で、明渡しを命じる断行仮処分が同条所定の終局的執行を全部完了しているのとは質的に異なるのであるため、この種仮処分につきその執行取消がなされた場合、執行官はいわゆる逆執行の手続を実施しなければなりません。

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