仮差押えと強制執行

すでに仮差押えの執行があった財産に対して、重ねて一般の債務名義にもとづく強制執行または国税徴収法による滞納処分をすることができるのでしょうか。仮差押えは、将来の金銭執行を保全するもので、金銭執行と究極的には同じ目的をもち、両者は矛盾衝突することなく競合しうります。しかし、例えば仮差押中の動産に対し引渡請求の強制執行をする場合のような執行の目的が異なる非金銭執行との関係では問題があります。したがって、すでに仮差押えの執行があった財産に対して強制執行をなしうるかについては、その強制執行が金銭執行か非金銭執行かに分けて考察する必要があります。

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金銭執行の場合、二重差押えを禁止する民訴法五八六条も第三項で仮差に係る物に付ては本条の規定を適用せすと規定しているため、照査手続の問題は生じず、すでに仮差押中の財産に対し重ねて独自に強制執行をすることができます。仮差押債権者は、後からの強制執行に対して配当要求したのと同一の権利をもつことになるだけでこの強制執行を阻止することはできません。したがって、強制執行手続中に仮差押債権者のために本執行が開始されない場合、彼のために配当額を供託して強制執行手続を終結しうる。仮差押債権者は、本案訴訟において勝訴の仮執行宣言付き判決あるいは確定判決を得て本執行に移ることによって、はじめて供託された配当金を手に入れることができます。仮差押中の債権につき、他の一般金銭債権者が取立命令を得ることは許されます。その場合、仮差押債権者は、取立債権者から自己の配当額の交付をうけるか、取立債権者に自己の配当額に相当する金額の交付を求めるべきであり、第三債務者に対し当該債権の弁済を求めえません。一方で、転付命令は差押債権を券面額で支払いに代えて差押債権者に移転する効力をもつから、もし転付命令を認めると、仮差押債権者の配当要求の権利を排除することになり、仮差押えを無意識にしてしまいます。したがって、転付命令は発しえないと解すべぎであり、もし誤って発せられた場合は無効です。しかし、そのため、転付き命令申請債権者のためになされた差押命令までが効力を失うことはありません。
仮差押えの目的たる金銭あるいは仮差押えの目的物のt換価金が供託された場合に他の債権者がこの供託金に対し強制執行できるかの問題があります。否定説、有体動産として差押えうるとの説、債権差押えの手続によるべしとの三説があります。供託金払渡請求権が、債権者または債務者に属すると解するか、執行官に属すると解するかによって結論が異なってきます。前者の場合は、供託所を第三債務者とする債権差押えの手続により、後者の場合は、有体動産執行の手続によることになります。
非金銭執行の場合、二つの見解があります。(1)仮差押中の目的物に対し金銭の支払いを目的としない債権にもとづいて強制執行することを許さない説と、(2)この場合にも競合を認め、後からなされる執行は仮差押的効力を有するにすぎないとする説です。(1)の消極説は、民訴法五八六条三項は仮差押物に対する金銭執行の場合で、非金銭執行を予想したものでないこと、つまり、例えば仮差押中の動産に対し引渡請求の強制執行を許すと、仮差押えの目的が達せられなくなることを理由とします。そして、仮差押目的物に対し所有権その他執行を妨げる権利をもつ第三者は、第三者異議の訴えで仮差押えの執行をまず排除しておく必要があると解されます。他方、(2)説によると、後行の強制執行は差押えの段階で停止させ、それよりさきに進まないということになります。この見解は、もし、先行の仮差押えが解除されたら直ちに後行の強制執行を終局的に実現することができ、強制執行債権者にとって大へん便利です。しかし、差押えだけ認め、その先の手続に進むことを否定しえるかは問題です。(2)説からは、強制執行を途中で停止させる理論的根拠が明らかにされていないように思われます。先行する仮差押えの効力が後行の強制執行を差押えの段階で停止させると説くことも可能かもしれません。しかし、仮差押えの効力をそのようなものと理解しうるかはやはり疑問です。魅力はありますが、にわかには(2)説に賛成しがたく、仮差押えと非金銭執行の場合は、執行の目的も執行の方法も異なり、両者の執行は矛盾衝突するもので、執行の競合は生じず、執行の接触の場合であり、仮差押制度の目的から考えて後行の執行は拒否されるべきであるため、(1)の消極説を支持したい。
なお、設問とは逆にすでに強制執行により差押えがなされている物件に対し仮差押えをなしうるかという問題があります。すでに差押えをした物件には、仮差押えの執行をなしえず、仮差押債権者は配当要求をするほかないとして両者の競合を語めない見解と、差押えが取り消された場合のことを考慮、競合を認める見解があります。競合を認める場合は、二重差押禁止の適用があるため、仮差押執行は照査手続によります。照査手続によらないでなされた仮差押えについて、判例は、差押債権者に執行方法の異議による救済を語める仮差押えの場合は換価まで進まず、既述のとおり仮差押えが先行する場合も配当要求の権利をもつだけであるから前説も一理ありますが、換価まで進まないから競合を認めても問題はないし、かえって差押えが取り消された場合、あらためて仮差押えをしなければならない前説よりも後説のほうがすぐれています。

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