保全命令の執行期間

保全命令に対する異議審の審理中にその保全命令につき執行期間が徒過した場合、異議審の判決において原保全命令を認可することができるでしょうか。すでに保全命令の執行がありましたが、異議審の仮執行宣言付保全命令取消判決にもとづき執行が取り消され、その後、控訴審判決において原保全命令が認可された場合、債格者ば再び執行を求めることができるでしょうか。まず、異議審の審理中に執行期間が徒過した場合を二つに分けることができます。異議申立てに伴う執行停止決定により、債権者が執行しようと欲しても、執行できなかったために執行期間を徒過した場合と、かかる執行停止決定はなく、債権者が欲すれば執行できたのに、執行期間を徒過した場合です。また、原保全命令を認可するといっても、単純に認可する場合と、条件付、ことに立保証もしくは追加保証を命じて認可する場合、さらに原保全命令の一部を認可する場合とがあります。

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異議申立てに伴う執行停止決定がなかったのに執行期間を徒過した場合、保全命令の執行期間はその言渡しまたは債権者への送達によって進行を開始し保全命令に対する異議申立てがあっても当然に進行を停止することはないため、異議審において原保全命令を認可する判決があった場合にも新たに執行期間が進行するわけではない、と説くのが、日本の通説であり異説は見当らないようです。ドイツの通説も日本のそれと同じですが、ここでは注目すべき異説が唱えられています。つまり、もし通説のように解すれば、債権者は異議が理由があるか否か不明な段階で保全命令を執行しておかなければならないことになりますが、執行には厳しい損害賠償義務が課されていることを考えると、債権者を大きな危険に追いやる結果となります。他方、異議手続では保全命令発令後の事情変更をも主張することができ、終局判決はその後の事情の変更をも主張するため、ドイツ民訴法九二九条二項が防避しようとした危検は生じる余地はありません。したがって債権者の利益のために、保全命令の認可があったときから、あらためて執行期間が進行すると解すべぎです。また、そのように解しても、債務者に著しく不利とはいえないのみならず、債権者がやたらにさきを急いで執行しなくなる結果、逆に債務者に有利になる可能性があります。ドイツの異説は概要以上のように説きます。
通説に従えば、裁判所はもはや原保全命令をそのまま認可することはできず、仮に認可しても、執行できない、ほとんど無意味な保全命令を発したことに帰着します。これに対して、異説に従えば、裁判所は原保全命令をそのまま認可することは、口頭弁論終結当時保全の要件が具備するかぎり、可能であり、かつ意味があります。そこでは、異議申立後執行期間が経週しても、執行期間徒過の効果は生じず、したがって執行期間徒過にもとづいて直ちに保全命令の取消を求めることはできない、とされます。なお、各説とも、保証を条件として原保全命令を認可する場合や、原保全命令を変更する場合も、原保全命令の執行期間が徒過しているかぎり、原保全命令をそのまま認可する場合と、それぞれ同じ取扱いになります。
異議申立てに伴う執行停止決定がなされたために執行期間を徒過した場合、この場合には、その後に執行停止決定が失効し、執行しうるようになった時、つまり、執行停止決定が取り消され、もしくは異議手続において原保全命令が認可された時から、あらためて執行期間が進行する、とするのが日本およびドイツの通説、判例でありほとんど異説をみません。そして通説、判例によれば、裁判所は、原保全命令をそのまま認可することは、口頭弁論終結当時保全の要件が具備するかぎり、可能であり、かつ意味があります。保証を条件として原保全命令を認可する場合や、原保全命令を変更する場合も、まったく同様に考えられます。
保全命令に対する異議審の仮執行宣言付保全命令取消判決にもとづき執行が取り消された後、その控訴審でなされた、原保全命令認可判決は執行可能判決は執行可能なのでしょうか。この場合について、日本の判例は、控訴審の原保全命令認可判決にもとづく執行は、さきに取り消された原保全命令の執行の続行であるため、七四九条二項の執行期間を守る必要はない、とします。日本の学説には、この判例の立場を支持するものもありますが、控訴審の認可判決の言渡しの時から、あらためて執行期間が進行すると説くのが多数説です。ドイツでは、判例、学説とも、ほぽ一致して日本の多数説の立場をとります。
異議審判決ですでに執行された原保全命令を保証を条件にして認可したり、あるいは同命令を変した場合、執行期間の問題はどうなるのでしょうか。この場合について、日本の学説は分かれているといってよい。すなわち、ある説は、保証を条件にして原保全命令を認可する場合と、同命令を変更する場合とを区別せず、ともに新たな保全処分がなされたものとみて、その裁判言渡の時から新たに執行期間が進行するものと解するのが相当であると説きます。この説によれば、果証を条件に認可する場合には、執行期間内に保証をたてなければならないことになると思わます。これに対し、他の説は、保証を条件に認可する場合については、認可後に新たな保全処分の執行をなすということは考えられず、むしろすでになされている原保全命令の執行の維持が立保証にかからせられたものと考えて、債権者の立保証は、債務者が事情変更による取消の訴えを提起し、これに対して裁判所が事実審の口頭弁論終結決定をするまでになせばたりる、と説きます。この説によれば、保証を条件に認可する場合には執行期間の準用はまったくないことになります。判例も、前説をとるとみられるもの、後説とみられるものに分かれています。ドイツで、日本の前説が多数説のその少数説として、新たな執行期間内ではなく、相当な期間内に遅滞なく保証をたてなければならないとする説があります。そして、遅滞の有無の判断にあたっては、条件付認可判決がなされたことによって、債権者は原保全命令の執行により、いわば不当に責務者の権利圏を侵害したことが明らかになったことや、債権者としては、異議が申し立てられた時にすでに、立保証が命じられるかもしれないことを十分予想して、その準備を考えておかなげればならないことを顧慮すべきである、としています。この説は、日本の後説とは明らかに異なるもので、むしろ前述した、執行の続行の理論と同じと考えられます。

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