仮処分に対する異議

仮処分命令に不服のある債務者は、仮処分が決定でなされた場合は、その決定をした裁判所に異議を申し立て仮処分が判決でなされた場合は、控訴を申し立てることができます。保全処分は、その性質上緊急に執行されることを必要とするため、法は、執行開始の要件に特則を設け仮処分を命じる決定または判決は、告知または言渡しと同時に執行力を生じるものとし、異議の申立てがあっても、仮処分の執行力は停止しないものとしています。そこで仮処分命令は、異議または控訴の申立てがあった場合、その執行力を停止または取り消すことはできないのか、それとも、民訴法五○○条、五一二条を準用ないしは類推して、その執行力を停止または取り消しうる場合があるかが問題となります。

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仮執行の宣言を付した判決に対し控訴を提起した場合または仮執行の宣言を付した支払命令に対し異議の申立てがあった場合の執行停止等につき規定する民訴法五一二条については、裁判所は申立てがあれば、保証をたてさせるかどうか、およびその額をいくらにするかについてはこれを判断することができますが、執行停止の当否については判断権がなく、申立てがあれば当然停止決定をだすべぎであるとするのが実務の大勢であるので仮に本問の場合に、同案をそのまま準用して、仮処分命令の執行停上等を仮執行宣言付支払命令に対する異議の申立てまたは仮執行宣言付判決に対する控訴の場合と同様に扱うときは、仮処分命令は不服申立てにより、容易にその執行力が停止されることになり、その制度本来の目的を達成することができなくなる場合が容易に生じることが予想されます。他方、仮処分命令は、その迅速性、密行性の要請から、債務者を審尋することすらなく、もっぱら債権者側の資料だけにもとづいて、出されることが多く、いったん仮処分命令が出されると、債務者側がこれを争い、その取消を求めるためには、異議、控訴等の手続を経なければならず、その意味で仮処分命令は、手続的に、出しやすく、取り消しにくい性質を有しています。したがって、いったん仮処分命令がだされた以上は、いかなる場合でもその執行力を停止することはできないとすることも、時に不当に債務者の権利を害することになりかねません。
学説は、次の三つに大別することができます。
消極説では仮処分は、権利の終局的実現を目的とするものではなく、たんに権利の保全のための仮の緊急措置を議じるにすぎないものであるため、これに対し、一時的応急措置を講じ、執行を停止または取り消す必要は本来性質上存在せず、仮執行宣言の付された裁判につき定められた民訴法五一二条は、これの付されない仮処分には適用されないとされます。
折衷説では原則的に五一二条の準用を否定しながらも、債権者の満足を目的とする権利の終局的実現をもたらすような仮処分にかぎり、民訴法五○○条、五一二条を準用ないしは類推して、執行停止等を認めます。
積極説では民訴法五○○条、五一二条を準用ないしは類推し、異議または上訴が理由ありとみえ、停止しないことにより回復しがたい損害の生じるおそれのあること等を要件に、執行停止等を認めます。
判例は、当初、民訴法七五六条・七四四条三項が、異議申立ては仮処分の執行を停止せずと規定しておりまた、仮執行宣言の付された裁判について定められた民訴法五一二条の規定は、それの付されていない仮処分には適用がないとして、この問題につき消極説の立場をとってきましたが、昭和二三年三月三日の最高裁決定は、原則として消極説にたつことを明らかにすることもに、原則論は現実になされた仮処分が、その本来の使命である権利保全のためにする仮の緊急措置たる範囲を逸脱しておらないことを必須条件とするとしたうえ、仮処分の内容が、権利の終局的実現を招来するごときものであって、その執行が債務者に対して回復することのできない損害を生じる虞のある場合には、民訴法五○○条の立法精神に徴しても、仮処分命令に異議または上訴の申立てがあったときは、例外的に同案および五一二条の規定を類推して、執行停止ができる。旨判示し、さらに、昭和二五年九月二五日の最高裁大法廷決定は、決定と同様、仮処分の執行停止については、原則的に消極説にたつことを明らかにするとともに、具体的になされた仮処分の内容が、権利保全の範囲にとどまらず、その終局的満足を得せしめ、若しくは、その執行により債務者に対し回復することのできない損害を生じしめる虞あるようなものであるならば、その執行は実質上終局的執行のなされた場合と何らえらぶところはないのであるため、この場合においてのみ、例外として民訴法五一二条を準用する必要がある。と判示して、仮処分命令についても、例外的に不服申立てのあるときはその執行を停止することができることを明らかにするにいたりました。

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