相殺に供される債権の種類

一般的に相殺は相互に担保的作用を果している債権相互を便宜と公平の観点から決済させる制度であるだけに、民法上の要請は同種の目的の債権の対立と弁済期の到来した債権の対立あるものを相殺適状にあるものと構成するのに対して、破産法は集団的清算処理手続であるがゆえに、こうした相殺の一般的要件を大幅に緩和し、次のように債権の種類および弁済期の点に関して、立法上の手当をしています。自働債権に関しては、期限付債権、解除案件付債権、非金銭債権、額の不確定な金銭債権、外国の通貨によって定めた債権さらに定期金債権のうち金額および存続期間の不確定債権など、あらゆる種類の債権が自働債権たりうることを認め、他方、受働債権に関しても、期限付債権、条件付債権さらに将来の請求権なども相殺に供しうります。このように、相互の債権は、弁済期にあることも要せず、また、目的を同種にすることも要しません。ただし、注意すべきこととして自働債権としての停止案件付債権または将来の請求権は、その性質上、即座に相殺に供することはできないため、破産手続中、条件が成就または請求権が現実化することを見越して、相殺権を確保するため、反対債権を弁済する際に、弁済額の寄託を破産管財人に対して請求しうるものとし、後日の相殺に備えています。他方で解除案件付債権は、却座に相殺権が認められますが、相殺後、破産手続中に、解除案件が成就すると相殺は効力を失うことになります。このことを想定して、相殺額について担保を供し、または寄託を要求されるなどの手当がなされています。しかし、いずれにしても、自働債権としての破産債権については、破産債権の現在化および金額評価が行われ、破産宣告の時を基準にして、それぞれの、評価額または金額が相殺額の基準となります。

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破産債権者は、各種破産債権を破産手続によらずに行使できますが相殺の効力と関連して、破産債権 の届出、調査、確定の手続を要するかについては対立があります。
消極説では破産債権の届出、調査、確定手続は要しないとする見解で、通説です。その論拠は、破産債権者の確定手続への参加は破産法一六条によっても強制されるものでなく、手続参加の必要はあり得ても、義務ではありません。別除権者の届出処置は、たまたま、不足額ある場合にかぎって、届出を要求されるものであり、通常、届出手続は不要とされるために、両者のバランスを失しません。破産債権の現在化、金額評価の規定は準用される体裁をとっていること、つまり準用するとの規定は届出、調査、確定手続が不要であることを予定するものたること、管財人による相殺権の承認の問題は、管財人に対する信頼の問題であり、一九七条一三号の規定は、立法趣旨からも相殺権に類推適用されるべきものであること。何よりも、破産法九八条が破産手続と関係なく相殺権を行使しうべきことを定めているとみられること、などをあげています。そして、もし、破産管財人が、相殺の効力を争う時は、破産債権者は、管財人から受働債権たる破産財団所属の債権について給付または確認訴訟の提起された折りに、相殺の抗弁を主張して、その判断を求めれば足りるとされます。
積極説は債権の届出、調査、確定手続を要するとの見解です。その論拠を、相殺権も破産債権たることに変りはなく、したがって届出、確定の手続を要すること。届出、調査、確定手続を不要とすることは、管財人に債権確定権限を認めるに等しくなり不当であること。別除権者も確定手続を要する場合もあること。管財人の承認を要する財団債権または別除権と異なり、相殺権では、相殺権の承認に関する規定を欠き、かつ、これを認めるとすると別除権以上に強力な相殺権について、管財人に処分権を認めることになり不当であること。相殺権は確定手続に組み込まれるために相殺の効力は、単に延期的効力を生じるに止まり、その行使は確定また債務消滅の効力を生じるものと解すぺきものではないことなどを挙げています。

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