財団債権の行使

財団債権は、破産財団より破産手続によらないで、随時に、かつ破産債権に優先して弁済されます。財団債権は破産財団より、破産債権に優先して弁済されます。財団債権は破産手続の遂行上必要な費用であり、総破産債権者の利益のためのものから、破産財団より破産債権に優先して弁済を受けられるよう取り扱われないと手続の円滑な遂行が困難となるからです。この点、財団債権は、一般の先取特権その他一般の優先権と類似しますが、財団債権は後述の破産手続によらないで弁済を受け、一般の先取特権等は破産手続によらなげれば弁済を受け得ない点で異なります。
財団債権は、破産手続によらないで、随時に弁済されます。財団債権の引当となる財産は、破産財団ですが、債権の届出、調査、確定、配当という破産法独特の弁済手続を経ないで、その価額が10万円未満であれば管財人は単独で、10万円以上であれば監査委員の同意、または債権者集会の決議もしくは裁判所の許可を得て、随時に弁済されます。

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財団不足の場合の按分弁済。破産財団が、財団債権の総額を弁済するに不足であることが、分明したときは、債権額に応じ割合弁済されます。もっとも、財団債権について留置権、特別の先取特権、質権、抵当権の効力が認められ、また四七条一号ないし七号の財団債権は、他の財団債権に優先して弁済されます。破産財団が、財団債権を完済するに不足な場合、破産終了後破産者の人的債務と考えられる四七条二号、六号等の債権を除いて、他は、その残額を破産者に請求できないと解されています。なお、財団債権としての破産管財人の報酬は、財団不足の場合は、財団債権としての租税債権に優先するとした判例があります。
管財人がある財団債権を承認せず、その弁済をしない場合は、財団債権者は管財人に対して給付、または確認の訴えを提起しうるか問題となりますが、破産法六九条一項後段や同三五五条後段の規定の越旨から推して、財団債権の在否、ならびにその金額について、訴えを提起しうるものと解されています。後に述べる財団債権による強制執行または滞納処分については、その可否について争いがありますが、訴えの提起の可否については、学説、実務とも、それを可としています。
財団債権にもとづいて強制執行が許されるかについては、議論が分かれています。強制執行を許さないとする考え方の論拠はかりに許すとするなら、破産法が財団債権の平等弁済を規定している同法五一条、二八六条の適用が困難となり、ひいては不平等を招来する結果となることです。もし許されないとしても、不利益を受ける財団債権者の救済は、破産裁判所の監督権一六一条の発動、管財人に対する損害賠償責任の追及でカバーできると考えられます。
しかし、通説は次の理由により強制執行は可能であるとしています。破産債権よりも優遇されるべき財団債権が強制的実現の手段を欠くとするのは不都合であり、また、管財人に対する裁判所の監督権の発動、損害賠償の追及のみでは、財団債権の実効を期待しえないこと。さらに、消極説が論拠とする破産法五一条、二八六条の規定は財団不足の場合の財団債権の弁済方法であって、不足が明白になるまでは強制執行を許しても何ら不都合はないことが、その根拠となっています。
しかし、強制執行に関し裁判例としては、消極に解されているようです。これはかつての有力学説が消極説であったせいもあろうかと思われます。ところが、さらに消極説を勇気づけるものとして、最高裁判所は、破産宣告後に、租税債権にもとづいて破産財団所属財産に対し、新たに滞納処分を開始しうるか否かについて、それは許されないと判示しました。この帯納処分の開始の否定が、一般の財団債権にもとづく強制執行の否定にまで及ぶかは、判示からはうかがえませんが、租税債権の滞納処分の開始による管財事務遂行上の障害と財団債権による強制執行のそれとは量的にも質的にも差があるために、最高裁判決をもって直ちに財団債権による強制執行が否定されたとは結論できません。
祖税債権は財団債権とされていますが、これにもとづいて破産宣告後新たに帯納処分を開始しうるか否かについても争いがあります。
最高裁は破産法七一条一項を破産宣告前の滞納処分の破産宣告後の続行を特に許したものと解し、その反対解釈として、破産宣告後に新たに滞納処分は許されないとするのが破産法 の趣旨だと解して先に述べたとおり否定説にたっています。
破産法七一条一項は、同七○条一項の原則に対する例外を明確にする規定であると解し、破産宣告前に開始された滞納処分の続行を許していることは、もともと財団債権にもとづく強制執行が破産における個別執行禁止の原則に接触しないという考えを前提とするものであるとして、最高裁の否定説の根拠条文である七一条一項は、かえって肯定説の根拠にもなるとしています。このように説が分かれているのは、先に述べたように財団債権一般についてもその強制執行の可否について争いがあること。破産法が、実質的には破産債権と同視さるべき租税債権を財団債権として保護したこと。管財人が苦労して集めた財産を租税債権で、すっかりもっていかれるということを避けたいという現実的要求があること等がその原因です。破産債権より優遇されるぺき財団債権が強制的実現を欠くというのも不可思議であり、かといって租税債権は他の財団債権とは異質であり、ときには破産手続遂行上障害となっていることなどを考え合わせ、そこで一般の財団債権にもとづく強割執行は許されますが、破産宣告前の租税債権にもとづく強制処分は許されないという考え方が折衷説として主張されています。

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