財団債権の弁済

財団債権は、破産手続によらず破産財団より随時支払われることとされています。破産財団が財団債権を支払うのに十分であれば格別問題はありませんが、財団が財団債権の総額を弁済するのに不足するときいかに処理すべきかが問題となります。この問題に対して、破産法五一条は、破産財団が不足することが明らかとなったとき、未済の財団債権の弁済について、留置権、特別の先取特権、質権および抵当権のついているものは、その優先的効力を認めますが、その他は、破産法四七条一号ないし七号までのものとその余のものとの二グループにわけ、前者のグループに属する財団債権を後者に属するものより優先させることとし、その各グループ内の財団債権相互間には、法令による優先権を否定し、債権額に応じて弁済されるものとしています。この規定の文言からみれば、破産法四七条一号から七号までの財団債権の間には優劣がないものとされるようです。このことに関して、従来から特に問題とされているのは、同条二号の国税徴収法または国税徴取の例により徴収することを得べき請求権と同条三号の破産財団の管理、換値および配当に関する費用に含まれるとされている破産管財人の報酬との関係についてです。

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平等説では破産法四七条一号から七号までの財団債権の間に優劣なく、財団が財団債権の総額を弁済するのに不足するときは割合配当すべきとします。公祖公課および破産手続上の費用等はその間に優劣なくして、平等の取扱を受けるべきものなりと解するを正当とすとしています。また、破産法制定当時の立法の趣旨についての説明によれば、財団が不足するときに財団債権者間に差を設けるべきではないとしています。
優劣を認める説として、平等説は五一条の文言に忠実であり、旧商法一○○九条のように管財人の報酬を特に優先させる旨の規定がないことから支持さるべきもののように感じます。しかし、破産法制定当時の国税徴収法には、国税は破産手続上の費用に先立って徴取しない旨の規定があり破産法は、国税を財団債権とし、四七条、五一条を設けたのですが、これによって破産手続の費用と国税とを平等に扱う趣旨であったとはいえません。現行の国税徴収法においても、強制換価手続が行われた場合には、その手続費用について国税を徴収する旨規定し、この強制換価手続の中には破産手続を含ませています。これは、破産手続の費用はいわゆる共益費用であるために、共益費用の先取特権を認めたのと同趣旨です。民法は一般の完取特権として、第一順位に共益費用の先取特権を規定しています。これは、共益費用の債権を発生せしめる行為が他のすべての債権者の利益となるがらで公平の原則の要求に従ったものです。そして、一般の先取特権は、特別の先取特権に劣後しますが、共益費用の先取特権はその利益を受けた総債権者に対して優先するものとされています。国税徴収法、民法の規定の趣旨からして、破産法五一条一項但書が財団債権に付着する特別の先取特権の効力を妨げない旨規定しているので、特別の先取特権より優先する共益費用を最優先させることを破産法も認めているということができます。したがって、共益費用である破産手続の費用に含まれる管財人の報酬は、国税に優先すると判断されます。
この問題に関して、最判昭和四五年一○月三○日は破産手続において破産管財人の受けるべき報酬は、破産法四七条三号にいう破産財団の管理、換価及配当に関する費用に含まれると解すべきです。そして費用は、共益費用であるために、それが国税その他の公課に優先して支払を受けられるものであることはいうまでもないことですが、このことは破産財団をもってすべての財団債権を弁済することができない場合でも同様であると解するのが相当です。破産法五一条一項本文は、財団財産が財団債権を弁済するに不足した場合には、法令に定める優先権にかかわらず各財団債権の額に応じて按分する旨を規定しますが、前述のような共益費用が国税その他の公課に優先すべきことは、元束自明のことであって、破産法五一条がこの法理までも変更したものと解することはできないのであると判示しています。なお、管財人の報酬が国税その他の公課に優先すべぎことを、後法である国税徴収法九条が前法である破産法五一条の平等原則を破るとの原則から導く考え方もあります。

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