財団債権

破産手続は、全破産債権者のため、破産財団を確保、拡張し、ついでこれを処分換価して配当を実施する一連の手続であり、この手続を遂行するのに必要な宣告後の共益費用を全破産債権者の共同負担とみて、破産債権に優先した扱いをしようとするのが、財団債権の制度で、会社更生法の共益債権制度に通じます。破産法四七条は、財団債権となるべき請求権を一号から九号まで列挙していますが、後述する租税公課を別とすれば、ほとんどが財団の確保育成、維持管理、換価配当等宣告後の財団運営上派生する共益干ようとみるペきものばかりであり、同法四八条による財団債権も財団の確保育成に付随した財団自体の負担とみることができます。これらの費用を通常の破産債権と性質を異にするものとして一線を画し、破産財団より随時破産手続外で優先弁済させることは、必要な制度であるといえます。

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破産法四七条二号は、前記のような必要経費以外に、特に租税債権を財団債権としてみとめ、国税徴収法又は国税徴収の例により徴収することを得べき請求権、但し宣告後の原因に基く請求権は破産財団に関して生じたるものに限ると定め、少なくとも破産宣告前の原因にかかる租税債権は財団債権として認めたものです。しかしながら破産法のかかる取扱は、前記した財団債権の本質からは説明しえません。会社更生法が、租税債権といえども、優先的更生債権として共益債権としていないのと比較して、立法的に問題のあるところであり、結局租税優位性の政策的配慮からであり、立法当時の社会情勢からと思われます。実務において、管財人は乏しき財団の組成につとめた結果が、まず租税に充当され、それに要した費用もすべて財団の負担となり、これらは結局は一般債権者の負担に帰せられます。更生法においても、更生債権としながらも、各手続の面で租税優先主義は保たれており、これらと比較して将来の破産法立法時の問題です。ただし、手続的には、管財人を執行機関とする国税徴収法の建て前から交付要求によるべきで、破産管財人としては、現行法の建て前からは、その手続面から租税当局との折衝が残されるのみです。
宣告前の労働退職金、未払給料等が優先権ある破産債権となり、管財人がこれを配当する場合に、源泉徴収する義務があるかどうかにつき、争いとなったことがあります。現在は退職金への課税が免ぜられているので問題は少なくななりましたが、もし義務ありとすれば源泉税その他を差し引き、これを財団債権に準じて納付することになります。
破産宣告後の原因にかかる租税債権については、同号但書も破産財団に関して生じたものに限ると規定しており、政策的配慮よりも破産財団との関連を特に明記して、破産債権者の為の共益的支出とみられるものにかぎる趣旨と一般に解されています。ただ一口に共益的支出といっても、宣告後種々の局面で発生する各租税債権のうちどこまでがこれに該当するかは必ずしも明確ではありません。この問題につき最高裁は昭和四三年一○月八日の第三小法廷判決において一つの注目的判断を示しました。事案は、破産者宣告後生じた破産者の酒造権処分の譲渡所得等に課せられた所得税が財団債権となるかどうかが争われたものでしたが、この点につき第一審では、かかる所得税も破産財団存立にともなって発生する出捐の一で破産債権者の共同負担に帰すべきものとこれを積極に解し、逆に第二審では、破産法四七条二号但書の法意を課税客体が何人に属してもその課税に変化がないいわゆる物的租税に限定する趣旨と解し人的租税債務たる所得税はこれにあたらないと消極に解しました。これに対し最高裁は、まず同号但書の根拠を破産債権者にとっての共益的支出と解したうえで、財団債権扱いすべき範囲につき破産財団を構成する各個の財産の所有の事実に基いて課せられ、あるいはそれら各個の財産のそれぞれからの収益そのものに対して課せられる租税その他破産財団の管理上当然その径費と認められる公租公課のごときを指すものと具体的に定義づけ、当該所得税がこの基準に該当するか否かについては、所得税自体が一暦年内における各個人の財産、事業、勤労等による各種の所得を総合一本化した個人の総所得金額について、個人的事由による諸控除を行なったうえ、これに対応する累進税率の適用によって総合的な担税力に適合した課税を行なうことを目的とした租税であること、仮に所得中に破産財団に属する財団処分から派生する部分が含まれているとしても、その課税の対象はそれらとは別個の破産者個人について存する前叙の総所得金額という抽象的金額にほかならないと各判示して、これを消極に解しました。なおこの判例については、これまでいくつか判例批評が試みられており、概ね判旨を支持するものが多いといえます。ところで、破産法四七条二号但書の解釈基準につき最高裁が示した前記定義づけは、可能なかぎり合理的な基準を定めんとするものであり、妥当なものといえます。また所得税に対する判示もそれが各個人の所得の総合的租税力に課税根拠を持つとし、財産処分時の合理性のある解釈ということができます。ただ現実問題としては、最高裁の基準をもってしても数多の租税債権を逐一整然と振りわけることは必ずしも容易ではありません。従来学説においても二号但書の解釈如何は破産財団に関して生じたとの文言を主にしていた嫌いがありますが、担書は前記最高裁判決からもうかがえるごとく、宣告後は租税債権といえども財団債権の本質に立ち帰るべき旨を注記した点にむしろ意味があると解されます。

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