他人の生命の保険契約

株式会社が保険契約者となり、その役員や従業員を被保険者とする生命保険契約は、保険契約者以外の者の生死が保険事故となるので、他人の生命の保険契約とよばれます。これらの契約は、役員の死亡による損失や従業員の退職金の支払に備える目的で多数利用されています。生命保検商品の種類でいえば、養老保険(被保険者が定められた保険期間内に死亡したときに死亡保険金が支払われ、保険期間満了まで生存したときは満期保険金が支払われる)の場合もあれば、企業年金保険(団体単位で加入し、被保検者たる従業員がある年齢に達した時から終身年金またはある年数間の確定年金が支給される)の場合もあり、その他種々の商品が利用されています。保険契約者たる会社が保険金受取人となる場合もあれば、被保険者たる役員、従業員が直接保険金受取人となっている場合もあります。

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他人の生命の保険契約のうちで、純然たる生存保険契約を除いたもの、つまり他人の死亡を保険事故とする生命保険契約は、他人の死亡について賭博行為をしたり、故意にその他人の生命に危害を加えるなどの危検があるために、契約締結にあたって被保検者の同意が必要とされています。被保険者を保検金受取人とするときは、このような動機の不真面目さや危険がないので同憲は不要ですが、保険契約者が契約締結の後に保険金受取人を変更して被保険者以外の者にする場合は、原則に戻って被保険者の同意が必要です。なお、保検金受取人の指定、変更について付言すると、本来、保険金受取人を保検契約者以外の者とする保険契約は民法上の第三者のためにする契約の一種であるために、保険金受取人が権利を取得した以上、契約当事者はこれを変更または消滅させることはできないはずです。しかし、商法は生命保検契約が相当長期にわたり事情変更のともないやすい契約であることを考慮して、保険契約者が別段の意思表示により保倹金受取人を指定、変更する権利を留保することを認めています。そして約款ではこのような権利を留保するのが通例であるために保検金受取人の権利はきわめて不確実なものにすぎません。
前述のように他人の死亡を保険事故とする生命保検契約の場合には、被保険者以外の者を受取人とする指定、変更には被保険者の同意を必要としていますが、これは保険金受取人の地位を安定、強化しようという配慮よりも、他人の死亡を保険事故とする契約の動機の不真面目さや危険を排除しようとの理由にもとづくものと考えられます。このように、被保検者の地位は保険法上はもっぱら危検の防止や動機の不真面目さを排斥するために同意という形で配慮されているにすぎません。しかし、近時利用されているこの種の保険契約は前述のように被保険者自身が退職金を受給するなどの目的で結ばれることが多いので、保検契約者の破産の場合にもこの目的を何らかの形で維持できるような配慮が望ましい。

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