取締役の地位と破産

株式会社が破産した場合の取締役の地位については、二つの点から問題を検討する必要があります。第一は会社が破産した場合にも会社の執行機関は必要かということであり、第二は破産宣告後も会社の執行機関が必要だとした場合、従来の取締役ないし代表取締役がそのまま資格を保持するがどうかということです。さらに以上の前提問題として、破産宣告を受けた場合、会社自体どうなるかがまず検討されなければなりません。まず前提問題として、株式会社が破産宣告を受ければ、それは当然に会社の解散事由となります。しかし、それでただちに会社が消滅するわけではありません。会社の財産は破産財団に組み込まれ、その管理処分権は破産管財人に専属することになりますが、会社はなお、破産の目的の範囲内では存続するのです。

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破産宣告後も、破産の目的の範囲内では会社が存続するために、破産財団以外の関係において、会社活動の代表および執行機関が必要です。つまり破産管財人の権限は破産財団以外に及ばないために、会社の人格的活動についての意思決定ないし執行機関が必要となります。破産会社の活動範囲として争いのないものをあげれば、郵便物、電報の閲覧または交付を求めること、各種の申立をすること異議を述べること、抗告をすること、財産評価の立会をすること、意見を述べること、強制和議の提供をすることなどがあります。また商法の規定にしたがって法定の登記をすることも含まれます。破産会社において株主総会を開催する必要がある場合、総会の招集は取締役会および代表取締役の権限に属します。これに対し、株主総会の決議無効または取消などに関する訴えについては、破産管財人と破産会社のいずれが被告適格を有するかで議論がわかれています。このように争いのある場合もありますが、争いのないものについては、会社の代表および執行機関は破産管財人ではなく、もちろん清算人でもなく、代表取締役であるとする点では、判例、学説は固まっているといえます。商法四一七条一項は、株式会社解散の場合には、原則として取締役が清算人となるべき旨を定めていますが、合併および破産の場合を除外しています。この趣旨は合併および破産の場合には、清算人選任の必要がないということと解されます。また、破産管財人は破産財団の管理処分権を専有しますが、破産財団に属する財産に影響を及ぽさないものについてはその権限は及びません。したがってこのような場合には破産会社について取締役会ないし代表取締役がその機関であるとせざるをえないわけです。
破産会社についても取締役ないし代表取締役が必要であるとして、従来から取締役ないし代表取締役であったものが、破産宣告によって当然にその地位を失うか否かについては議論がわかれています。破産を取締役の当然の退任事由とする説がどちらかというと多数説といえます。 その理由として、形式的には、商法二五四条三項および民法六五三条を根拠として、会社と取締役の関係が委任者の破産により終了するものとし、実質的には、会社を破綻にいたらしめた取締役がそのままその地位を保持すべきでないと考えられます。この見解によれば、破産宣告後、会社を代表および執行すべきものは、殊主総会によって新たに選任される取締役によって選ばれる代表取締役ということになりますが、利害関係人の請求により裁判所が必要と認めるときは仮取締役を選任することもできます。なお、会社の破産を取締役の当然の退任事由とすることを前提とした最高裁判例があることが注目されます。
会社が破産しても徒来の取締役はその地位にとどまるとする説も有力に主張されています。その理由として、民法六五三条の規定する場合のうち、受任者破産による委任の終了は信任関係の破壊にもとづきますが、委任者破産による委任終了の立法趣旨はこれと異なり、委任者が破産の結果みずからすることができなくなった行為は受任者もまたこれをすることができないために、委任は目的を達せずに終了するものであり、そうであれば会社破産の場合に破産者たる会社自身がすることができる事項については委任はなお終了しないと解すべきであること、また、破産当時の取締役全員が常に任務に違背して会社を破綻に陥らしめたとはいえないことがあげられます。
以上のうち、理論的にも実務的にも後説のほうがすぐれているように思われますが、判例では前説を採用している点に注意すべきです。なお、前述の最高裁判例は、同時破産廃止の場合について、取締役は破産によって当然退任するために同時破産廃止決定があっても当然清算人となるのではなく、原則として利害関係人の請求によって裁判所が清算人を選任すべきものとしています。

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