破産財団の意義と範囲

破産債権者の共同的満足のための引当として、独立の管理機構の下に統合される破産者の総財産を破産財団といいます。破産手続は、多数の債権者に平等な満足を与えるための集団的手続であるために、一方で特定の債権者による権利行使を禁ずるとともに、他方で総債権者の債権の引当である破産者の財産についても、破産者の管理処分権を奪い、これとは別個独立の管理機構の下に統合されるものとしています。破産財団は、このように、破産的清算という最終目的のために統合された目的財産です。債務者のいかなる財産が破産財団を構成するかについては、明文の規定があります。これらの規定によって当然かつ抽象的に定まるものを法定財団といいます。しかし現実には、破産手続が開始されて実際に破産管財人の下に統合される財産は、法定財団と必ずしも一致しないことがあります。本来は破産財団に属すべきでない第三者の財産が混入していたり、逆に債務者の財産でありながら、隠匿されていていまだ現実の管理に服していない財産もあるからです。このように、現にあるがままの状態で管理に服することになったものを現有財団といいます。現有財団を法定財団に一致するように整理するのは破産管財人の重要な任務の一つです。このようにして、整理されて、最終的に破産債権者に対する配当のために換価の対象となるものを配当財団といいます。

スポンサーリンク

お金を借りる!

法定財団は、あるぺき財産として範囲が法定されています。つまり破産者が、破産宣告の時において有する、差押が可能な一切の財産であって日本国内に存在するものをいいます。破産債権者への配当は破産財団を換価して得た金銭でなされます。そこで、原資たる破産財団を構成する財産とは、金銭的価値のある積極財産です。物であると権利であるとを問いません。さらに一定の事実関係も含みます。これに対して、労働力、技術など、および人格、身分に結びつく権利はここには含まれません。
第三者の財産は破産債権の引当とはなりません。これらは取戻権の行使によって現有財団から離れます。破産者に属する財産であるか否かは実体法の原則にしたがって決定されますが、いくつかの例外があります。ある財産が破産者に属するというためには、破産者が対抗要件を具備している必要はありません。前主との関係では、当該財産は破産者に属しているといえるからです。したがって、前述の場合も破産財団に属しているといえます。反対に、破産者からの取得には相手方は対抗要件を備えなければ、第三者たる破産管財人に対抗できないとされている。破産者の財産取得が担保、信託など特別の目的による場合があり、これらは、登記、占有等によって外観上は破産者に権利が移転しているようにみえますが、実質はそうでない場合です。担保でも、典型担保物権の場合に担保権者が破産すればこれが破産財団に属することに問題はありません。しかし、いわゆる非典型担保は、これを所有権的に構成するかぎり、財産は完全に担保権者に移転していることになり、担保権者破産の場合に当該財産は破産財団を構成します。逆に、譲渡担保については若干問題があるにしても非典型担保について担保権的に構成すれば、財産は移転しておらず、設定者は被担保債権を弁済して担保権を消滅させることができ、この場合には、当該財産は破産財団を構成しません。信託の場合には、財産は受託者に移転しますが、信託財産は受託者の債権者に対する責任財産ではありません。信託法によらない寄託、取立のための財産移転も、委託者の利益保護という観点から、一般には、破産財団を構成しないと解されています。
最後に、破産者自身が権利主張することのできない財産は破産財団を構成しません。問題は、法律行為の無効、取消を善意の第三者に対抗できない場合です。判例は、破産者に対して通謀仮装の手形を振り出した者に管財人が当該手形金を請求した事件で、管財人は破産者に対しても相手方に対しても第三者であるために民法九四条二項が適用されるのは当然であるとしたこれに対しては、判例は虚偽表示によって財産を取得した債務者の差押債権者は民法九四条二項の第三者にあたるとして、これと管財人とを同視していますが、同条を虚偽表示の外形を信頼してこれと取引した一般債権者を保護する規定とみれば、虚偽表示前の一般債権者は虚偽表示によって債務者に移転した財産を差し押えても外形を信頼して取引したとはいえないために、同条の第三者にあたらないとの見解もあります。最高裁は、その後、破産者のした虚偽の代物弁済の無効を第三者が管財人に対して主張した事案で、管財人は、破産債権者全体の共同の利益のためにも、善良な管理者の注意を以てその職務を行わねばならぬ者であるために、選任された後は、特段の法律行為をなしたかどうかに拘らず、ある財産が破産財団に属するかどうかを主張するにつき、法律上利害関係を有するために、民法九四条二項の第三者にあたるとしました。学説は一般には判例を支持しているようです。
破産宣告の時に破産者の有する財産であること、これは二つの意味をもっています。ひとつは、過去に破産者の財産であっても宣告当時すでにその手を離れているものは原則として破産財団を構成しないことで、もうひとつは、宣告後に破産者が取得した財産は事由財産として同じく破産財団を構成しません。立法例としては、宣告後に取得する財産も財団を構成するものとなりますが、日本の破産法はこれを採っていいません。ただし、固定主義によれば、破産債権者と宣告後の債権者との公平、破産者の再起更生の期待、破産財団の範囲が宣告時に確定することによる手続の迅速と債権者の迅速な満足などに資するからです。宣告時に破産者に属していたか否かは、取得原因が宣告前に存在したか否かによります。
差押可能な財産であること。破産も一種の執行であると考えれば当然のことですが、仮にそのように考えないとしても、債務者の最低限度の社会生活の維持に必要な財産の差押禁止の制度は、原則的に貫かれなければなりません。もっとも、これには若干の例外があります。つまり民事執行法上の差押禁止財産のうち、農業者、漁業者の経営上必要な物および宣告後差押が可能になった財産です。
相続財産の破産の場合には、これに属する一切の財産が破産財団となります。この場合には、被相続人が相続人に対して有した権利および相続人が被相続人に対して有した権利は消滅しなかったものとみなされます。相続人が相続財産の全部または一部を処分した後に破産宣告があった場合、相続人の得た反対給付を受ける権利は破産財団を構成する相続人がすでに反対給付を受けていれば破産財団に返還します。ただし相続人が破産開始について善意であれば現に利益を受ける程度でかまいません。

お金を借りる!

破産債権と財団債権の概念/ 別除権者の有する破産債権/ 企業破産と給料、退職金/ 多数債務者に対する破産債権/ 債務者の破産と保証人の地位/ 破産財団の意義と範囲/ 破産宣告の効果/ 賃貸借契約と破産/ 取締役の地位と破産/ 他人の生命の保険契約/ 破産管財人と保険会社/ 財団債権/ 財団債権の範囲/ 財団債権の弁済/ 財団債権の行使/ 取戻権/ 代償的取戻権/ 仮登記担保/ 仮登記担保権の破産手続上の地位/ 譲渡担保/ 譲渡担保の担保権者の破産/ 所有権留保/ 売主の取戻権/ 支払停止と回り手形債権/ 動産の特別先取特権/ 商事留置権/ 相殺に供される債権の種類/ 相殺権の制限/ 破産法による相殺権の制限/ 手形の買戻請求と預金債権の相殺/ 当座振込と貸金債権との相殺/ 相殺権の濫用/