多数債務者に対する破産債権

不可分債務、連帯債務、連帯保証債務、保証債務、重量的債務引受、不真正連帯債務、手形小切手上の合同債務など数人が各自全部の履行をなす義務を負う場合に、その全員または数人が破産宣告を受けたときは、債務者は各破産財団に対し破産宣告時の債権全額を以て配当加入できます。破産宣告までに弁済または他の破産財団からの配当などを受け、すでに債権の一部が消滅していれば債権額はそれだけ滅少しますが、宣告後に他の債務者から一部弁済を受けあるいは他の破産財団から配当を受けても、債権全部の満足を受けるまでは宣告当時の債権額を基準として配当にあずかれます。例えば100万円の債務を負担する5人の連帯債務者全員について、同時または異時に破産手続が開始され、それぞれの宣告時においていずれの破産財団の配当も実施されておらず、各財団において各一割の配当が行われたとすると、債権者は合計50万円の弁済を受けられます。もとより全部履行義務者のうちの一人が破産宣告を受けた場合も同様であり、債務の一部につき数人が全部義務を負担する場合にも準用され、全部義務者の数人または一人につき、それぞれ破産、更生、和議、整理、特別清算手続が開始された場合にも類推適用されます。

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民法は連帯債務と不可分債務につき、債権者は債権全額について各破産財団に配当加入できることを定めたが破産法はそれが宣告時の全額であることを明確にし、かつ連帯債務、不可分債務以外の全ての多数全部義務者について拡張した。このような取扱が認められるのは、債権の満足の確実をはかる全部義務の本質に即応するものであり、あるいは実体法上責任財産の集積により一つの責任財産の不足による危険を分散させうることを保障されている場合に、この実体法の越旨を破産手続においても貫徹させるためであり、あるいは債権者の請求の独立性の理論にもとづくものであって共同債務関係の担保的機能が最も発揮される場合であるなどと説明されています。
破産法の規定はドイツ法にならったものですが、この他に、債権者が各破産財団に対して行使できる債権を債権成立当時の全額とし、破産宣告前の一部消滅は影響しないとする例や、宣告前の任意弁済額は控除するが他の破産財団による配当などは差し引かないとする例があり、日本民法では、他の破産財団からの配当があった後に破産宣告があった場合と他から配当を受けないうちに破産手続が開始された場合とでは、現実に債権の満足を受ける額に差が生じることになりますが、もともと債権者は連帯債務者の何人に対してでも全額の請求をなしうるものであり、連帯債務者各自に対する他の債権者はこれを受忍すべきものであることから考えれば、破産においては常に全額で加入しうるという特殊な取扱をすることも必ずしも他の債権者を不当に害するものではなく、連帯債務者に対する債権の効力を確保するものであることを理由に、立法論として考慮すべきことを主張する意見もあり、同様の観点から不真正連帯債務についてはこの規定の適用はなく、債権成立当時の債権全額について破産債権を行使しうるとする有力説があります。
破産債権者は破産宣告当時の債楕全額について破産債権者として権利を行使できるために、宣告後に他の全部履行義務者の一部任意弁済を受領し、あるいは他の破産財団からの配当などを受けても、一旦届け出た債権額を滅額する必要はなく、またこれを無視して宣告時の債権額を破産債権額として届け出ることができます。このため債権者が債権額以上の弁済を受けることもありえますが、もとより債権額以上の満足を与える趣旨ではないので、破産管財人は配当にあたって留意すべきであり、債権額を超過する配当については他の破産債権者は配当表に対する異議を申し立てることができます。それにもかかわらず債権者が債権額超過の配当を受けたときは、他の全部義務者または他の破産者の破産管財人あるいはその超過配当をした破産管財人は、債権者に対し超過分を不当利得としてその返還を求めることができます。しかし滅額が相殺によって生じ、相殺適状が破産宣告前にあったときは、滅額の効力は遡及するために、破産債権者は債権額変更の届出をなすべきであり、変更の届出をしないときは債権調査期日における異議の対象となります。
為替手形の振出人、引受人、裏書人、保証人および約束手形の振出人、裏書人、保証人ならびに小切手の振出人、保証人は、いずれも所持人に対して合同責任を負担しており、各自全部の履行義務を負うために、その全員または数人あるいは一人について同時または異時に破産宣告があったときは、手形小切手の所持人は各破産財団に対し、宣告時の手形小切手金債権全額について破産債権者としての権利を行使することができます。
会社が振り出した約束手形に代表取締役が裏書した場合には、取締役会の承認を要するか否かについて見解がわかれていますが、いずれにしろ会社は手形の裏書譲渡を受けた第三者が、取締役会の承認がなかったことにつき悪意であったことを立証できなければその振出の無効を主張できず、その立証はきわめて困難なことが少なくないために、手形所持人は振出人である会社と裏書人である代表取緒役の双方の破産財団に対して、破産宣告時の手形債権全額について権利を行使できることとなります。
各破産財団からの配当によっては手形金の各一部しか支払を受けられないのが通常であるために、配当金受領にあたって手形を交付する必要はありませんが、配当の実施にあたり破産管財人から求められたときは、手形所持人は手形を呈示しなければならず、一部弁済を受領した旨を手形券面上に記載し、さらに受取証書を交付しなければなりません。また為替手形の引受人、支払人または引受呈示禁止手形の振出人あるいは約束手形の振出人が、満期前に破産宣告を受けたときは、手形所持人は遡及義務者に対し直ちに、破産決定書を提出することにより、手形金の支払を求めることができます。
数人が各自全部履行義務を負担する場合に、その数人または一人が破産宣告を受けたときは、破産者に対し将来の求償権を有する者はその全額について破産債権者として権利を行使できますが、重複した権利行使により他の債権者を害することはできないために、債権者が債権全額につき破産債権を行使したときは、事前求償権を行使できない求償権者が弁済したときは、弁済の割合に応じて債権者の権利を行使できるとされていますが債権者は全額の満足を受けないかぎりは宣告当事の債権全額について権利を行使できるために、宣告後に受けた他の全部履行義務者の弁済やその破産財団からの配当および当該破産財団からの配当を合算することにより、債権者が全部の満足を得てさらに超過分があるときにかぎり、超過分について求償権を行使しうるにすぎません。代表者が担保目的で裏書した場合には、債権者が振出人会社の破産財団に対し手形金全額を破産債権として届け出ているときは、代表者またはその破産管財人は事前求償権を行使できず、会社の破産財団からの配当と代表者の弁済またはその破産財団からの配当とを合算すると手形金額を超えるときにかぎり、代表者またはその破産管財人は振出人会社の破産財団に対し求償権を行使できることになります。

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