別除権者の有する破産債権

破産財団に属する財産の上に存する特別の先取特権、質権または抵当権を有する者はその目的である財産について別除権を有します。そして、別除権は、破産手続きによらないでこれを行使することができます。したがって、別除権者としては、別除権の行使によって債権全額の回収ができるかぎり、破産手続に参加して配当にあずかる必要はありませんが、破産債権を有するかぎり、破産手続への参加が認められないわけではありません。しかし、別除権と破産債権の行使を同時併行的に認めるのは、一般の破産債権者の利益を害する結果となることから、破産法は、別除権者の破産債権の行使を制限するための次のような規定を設けています。
(1)別除権者はその別除権の行使により弁済を受けることができない債権額についてのみ破産債権者として権利を行使することができる。ただし、別除権を放棄すれば、その債権額について破産債権者として権利を行使することができる。
(2)別除権者は、破産債権の届出に際して、別除権の目的およびその行使により弁済を受けることができない債権額を届け出なければならない。
(3)債権者集会において別除権者が議決権を行使できる債権額は、(2)の範囲にかぎられますが、その債権額について破産管財人または破産債権者が異議を述べたときは、裁判所は、議決権を行使させるかどうか、またいかなる金額について行使させるかを決定します。
(4)中間配当において、別除権者が配当にあずかるためには、配当の公告があった日から二週間以内に、破産管財人に対して別除権の目的の処分に着手したことを証明し、かつ、その処分により弁済を受けることができないであろう債権額を疎明しなければなりません。ただし、その場合でも、管財人は配当金の交付を一時留保し、これを寄託しなければなりません。
(5)別除権者が最後の配当に関する除斥期間内に破産管財人に対して別除権放棄の意思表示をせず、または別除権の行使により弁済を受けることができなかった債権額を証明しないときは、配当から除斥されます。
以上であすが、この場合に問題となるのは、別除権の行使によって弁済を受けられない債権額をいくらと見積って届け出るべきか、またその届出額により後日どのような拘束を受けるかの点があります。

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別除権の行使により弁済を受けられない債権額の算定にあたっては、目的物の評価方法がまず問題となりますが、破産法ではこの点について何らの規定をおいていません。会社更生法一七七条が、管財人の責任として財産の価額の評定を命じ、評定方法を更生手続開始決定時における会社の事業の継続を前掟とする旨を定めているのと大いに異なります。しかし、破産法も破産管財人は遅帯なく裁判所書記官、執行官又は公報人の立会を以て破産財団に属する一切の財産の価額を評定することを要す、とし一方、破産管財人は別除権者に対してその権利の目的たる財産の提示を求めることができ、別除権者は、破産管財人がこれによって別除権の目的物を評価することを拒むことができないと定めています。このことから、別除権の目的物の評価については、やはり破産管財人の責任においてなされるべきことであり、別除権者の届出も一応のものであって、それによって確定するものではないと解されています。
このように、別除権の目的の評価について特に制限がないとすると、別除権としてどのように見積って届け出るのが得策かが問題となります。この点は、次のところを考慮すると、別除権の目的の評価はなるべく押え、弁済を受けられない債権額を多い目に届け出るのが妥当であることになります。
第一に、少なくとも弁済を受けられない債権額を届け出ておかないと、破産手続において配当を受けることができません。
届け出た債権額が別除権の行使により弁済を受けうる金額を超える場合に、その超える金額について議決権を行使しても、それによって別除権を放棄したとみなされるわけではありません。これはあくまでも別除権の目的の評価の問題だからです。
管財人は、適当と認めるときは、別除権の目的を受け戻すことができますが、この受戻は、被担保債権の全部の弁済にもとづいて行われるものであり、別除権者の届け出による優先弁済を受けうると予想される金額のみの弁済により行われるものではないために、この点でも不都合はありません。
別除権者としては、債権の届出に際しては別除権の目的の評価を絶対安全圏まで押えて見積額を算出すべきです。もちろん、議決権の行使に際して異議が提出される理論上の可能性はありますが、物件の評価には困難がともなうことからいって、別除権者の評価が著しく不当なものでないかぎり、それが否定される実際上の危険性はほとんどないといえます。そして、各配当の除斥期間内に目的物の処分に着手したことを証明し、かつその債権の残額を疎明することによって、配当額の寄託を求め、最後の配当の除斥期間が経過するまでに、別除権の行使を完了させ、その結果を証期することにより、配当金を受領することになります。なお、前の配当において、着手の証明または残額の疎明をしなかったため配当から除斥された場合も、後の配当において証明および疎明をすれば、他の債権者に優先して配当を受けられるので配当額を予測できる場合は、最後の配当の除斥期間が経過するまでに、別除権の実行が完了するよう手続をすすめればよいことにはなりますが、やはり実務上は、各配当ごとに配当にあずかることができるように、別除権の行使手続を早めに進めるべきです。

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