破産債権と財団債権の概念

破産債権とは、支払不能、支払停止、債務超過等の理由で支払能力を失った債務者に対する、破産宣告前の原因によって生じた財産上の請求の総称です。つまり、その債権が破産者に対する請求権であること、財産上の請求権であること、破産宣告前の原困にもとづいて生じた請求権であること、性質上、強制しうる請求権であることの特徴を有しているものです。したがって、この要件に合致しない、物権的請求権、債務者の非代替的作為、不作為の請求権、破産宣告後に債務者がなした法律行為によって生じた請求権、および自然債務等は除外されることとなります。
破産宣告がなされると、それまで破産者が有していた一切の財産は、破産財団に属するものとされ破産者は、その管理処分の権限を失い、以後は競合する債権者のために公平な満足を円滑に与えるべく破産管財人が代りにその権利を行使することになります。そして、別除権や相殺権を有する場合を除いて、破産債権は破産手続によるのでなければ、これを行使することができず、各債権者は自己の破産債権を破産裁判所に届けでて、債権調査の手続により、その在否、債権額、順位の確定を受けて後、はじめて配当を受けることができるのです。これは、多数、存在する債権者全員の共同的、比例的満足をはかるという破産制度の本旨にもとづいているのであり、勝手に破産者に対して訴訟を提起することや強制執行を行うことは許されません。こうした通常の破産債権のほかに、法は、優先的なもの、および劣後的なものの二種を設けています。前者は普通の破産債権に先き立って弁済を受けうるもので、債務者の破産前の財産に一般の先取特権や優先弁済請求権のある債権がこれに該当し、後者は免責の裁判を受けた破産者が破産終了後に債務を残さないようにするためのものです。

スポンサーリンク

お金を借りる!

破産債権と対比されるものとして、財団債権があります。これは破産手読の遂行にともなって、破産財団に関し生じた財産上の請求権であり、破産宣告後に生じたものを原則とし、破産債権に優先して破産手続によることなく、直接、個別的に破産財団から弁済を受けることができます。これは本来は、破産宣告によって形成された破産財団から出捐されるものですが、それ以外のものでも性質上、特に財団債権として取り扱われるものもあります。
その債権が破産債権となるか、財団債権となるかは、基本的には、それが破産宣告前に生じたものか、あるいは破産宣告後に生じたものかの時間的基準によって決まります。法は、前述のように、破産宣告前の原因にもとづいて生じた請求権を破産債権として取り扱うのを原則としています。これは、債務の引当てとなる破産財目の範囲画定について固定主義を採用したことに対応するものであり、消極的財度の範囲もおのずと破産宣告前の請求権に限定したわけです。もっとも、債権自体が破産宣告前に発生している必要はなく、停上条件附債権であっても、その発生原因が破産宣告前に存在するものであるならば、破産債権となり得ます。
破産財団に属する物件が、他人の所有する土地の上に存在するが、土地使用につき法律上、正当な権限がないために不法占有となる場合、そこに生じる損害賠償請求権が、どのような性質のものとなるかについては、大別すると次の三つの見解が考えられます。まず、普通債権として、破産者個人が自由財団を引当てに、その弁済の責務を負う消極的自由財産とみる説。次に破産宣告後の不履行に因る損害賠償として劣後的な破産債権とみる説。最後に破産管財人が破産財団をもって弁済すべき財団に対する債権とみる説です。
設例の場合、土地の賃貸借契約はすでに破産宣告前に解除されているのであり、したがってそれ以後、不法占有が現在にいたるまで継続している状況にあるわけです。そこで、この土地明渡義務の不履行状態の継続によって生じる損害賠償請求権のうち、破産宣告前の部分は破産債権とみてもさしつかえなさそうにみえます。そして、破産宣告後の損害に関しては賃貸借契約とは全 然別個の法律関係で、なんら牽連性のない破産者が、その自由財産をもって賠償すべき債務であるとみる考えです。家屋の賃貸借契約が解除された後も、破産者が引き続きその家屋を不法占有している場合についてではありますが、判例にも下級審のものながら、こうした考えに依拠しているものがあります。しかし、この事件の場合には、破産者自身が家屋から退去すれば、明渡義務も履行できることから、直接、破産者に対して請求することの意味も認められるのに対して、本設例の場合は建物を収去して土地を明け渡さないかぎりは、義務の履行とはいえません。ところが破産宣告によって破産者個人は、建物についてもはや、管理処分権を失っている以上、破産者による義務の実現はありえないために、建物収去土地明渡請求、および明渡義務の不履行による損害賠償請求も破産者個人に対してなしうるものではなく、この見解は正当ではありません。次に明渡義務の不履行にもとづく土地の不法占有という状態は時間的継続性を有するものであることから、四六条二項にいう破産宣告後の不履行に因る損害賠償として劣後的破産債権とみる考えですが、これも正当ということはできません。そもそも、法条所定の劣後的債権は、たとえ、それが破産宣告前の原因による債務であっても、宣告後の破産者の態度によって破産債権が増えたのでは、他の一般の破産債権者との関係上、不都合が生じるため、劣後的に取り扱って、一般の破産債権者の受ける配当を害しないよう配慮した結果、設けられたものです。もっとも、破産宣告があると破産者の財産は破産財団に組み込まれ、それらの管理処分権も破産者の手を離れて破産管財人の下に移るために、その財産のうち破産者個人による旧債務の不履行ということは、特に破産者でなければなしえない不代替的作為義務等の極めてまれな場合を除いて、ほとんどありえないものとされています。設例において、土地の上に無権限のまま存在している建物は所有者である会社が破産宣告を受けたことにより破産財団のものとなり、管理処分権は会社から奪われてしまっています。したがって、この会社による建物収去土地明渡義務の不履行という考えは成り立ちません。この理由からの必然的な帰結として、不履行による損害賠償請求権を四六条二号所定の劣後的破産債権とみる考えも正当とはいえません。
そこで、最後の財団債権とみる考えですが、結局、この見解が正当と思われます。これは、前述のように破産宣告によって建物の管理処分権能が破産管財人の手に移ることから、建物を所有することによって、その関係が生じる土地に対する占有も、当然、破産管財人の管理処分権能の範囲内に属すると考えるのであり、いわば権能の反射的効果とみるものです。つまり破産財団に所属することとなった建物の所有にともなって、必然的に土地に対する占有が生じますが、その基礎となっているのは管理処分権能であるとしてとらえるのです。そして、この占有状態が破産宣告前から存在していたとしても、宣告後はやはり破産管財人の権能内の問題と考え、本来ならば正当な権限なしに存在する建物を除去して、土地の不法占有を止めるべきであるにもかかわらず、放置しているのは、管財人として要求される財団管理上の善管義務に反していると考えるわけです。このようにして、収去義務を怠ったため相手方に生じる損害賠償請求権は、四七条四号にいう破産財団に関し破産管財人の為したる行為に囚りて生じたる請求権に該当すると解されますが、これを設例に則していえば、破産管財人が建物を収去し、土地を明け渡すというなすべき義務をなさなかったがために生じた債権ということになります。したがって、四七条四号の行為の中にには、このような破産管財人の不作為も含まれるとみられます。

お金を借りる!

破産債権と財団債権の概念/ 別除権者の有する破産債権/ 企業破産と給料、退職金/ 多数債務者に対する破産債権/ 債務者の破産と保証人の地位/ 破産財団の意義と範囲/ 破産宣告の効果/ 賃貸借契約と破産/ 取締役の地位と破産/ 他人の生命の保険契約/ 破産管財人と保険会社/ 財団債権/ 財団債権の範囲/ 財団債権の弁済/ 財団債権の行使/ 取戻権/ 代償的取戻権/ 仮登記担保/ 仮登記担保権の破産手続上の地位/ 譲渡担保/ 譲渡担保の担保権者の破産/ 所有権留保/ 売主の取戻権/ 支払停止と回り手形債権/ 動産の特別先取特権/ 商事留置権/ 相殺に供される債権の種類/ 相殺権の制限/ 破産法による相殺権の制限/ 手形の買戻請求と預金債権の相殺/ 当座振込と貸金債権との相殺/ 相殺権の濫用/