物権の変動と成立

物権が発生したり消滅する事態を物権の変動といいます。民法ではこのことを設定・移転、得喪・変更、譲渡、消滅という用語で表しています。ここで設定・移転とは、地上権、低当権などの制限物権を創設することで移転とは、物権がある主体Aから他の主体Bに移行することをいい、得喪とは物権が権利主体たるAのものになったりAから離脱すること、変更とは主体の変更を除き、物権内容の変化をいい、譲渡とは物権が当事者の意思に基づいて移転することをいい、消滅とは物権が喪失・滅失することをいいます。
売買により所有権を取得するというのは通常のことですが、父が死亡したので子が遺産の不動産を相続によって取得したという具合に、人の死亡を原因として物権が変動する場合があります。この他、物権変動の原因は多様で、時効、混同、無主物先占、遺失物拾得、埋蔵物発見、附合・混和・加工などによっても物権は変動します。盗人の取得も税法上の取得だとされています。このように物権の変動は一定の法律要件に基づいて一定の法律効果が生じることなりますが、この物権変動の最も重要な原因は法律行為です。これは意思に基づく物権変動を目的とする行為・法律行為で、物権的法律行為・物権行為といいます。これには物権の放棄・遺贈のような単独行為である場合もありますが、契約である場合が多く、これを物権契約といいます。地上権、低当権などの設定契約がこれになります。

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物権の変動を目的とする法律行為は、どのような行為があった時に成立するかでは、例えば家屋の売買をするに当たって、売る・買う、という意思表示の合致があった時に物権変動が生じるのか、それとも売買契約書をとりかわし、代金と引換えに権利証を移転し、あるいは登記をした時に生じるのかということが問題となります。この物権的法律行為の成立に関しては論理的必然によって解決するわけにはいかないために、立法例も意思主義と形式主義との対立があり、民法上の解釈においても問題があります。
物権の変動は当事者の意思表示のみによって発生し、その他になんらの形式も必要でないとする考え方を意思主義といいます。意思表示のみによって物権変動を生じるというために、物権的法律行為の成立になんらの形式を必要とせずに、売買契約のような債権行為のみによって物権変動を生じ、物権的法律行為の独自の存在を認める必要がないわけです。この主義はフランス法系の民法が採用しているので仏法主義とも呼ばれます。これに対して物権の変動は当事者の意思表示のほかに引渡や登記というような一定の外形的要素を具備しなければ発生しないとする考え方を形式主義といいます。この主義においては物権的法律行為は必ず外部的表象をともない、それは債権的行為とは切り離して観念されるのであって、所有権移転行為の原因となった売買契約つまり債権的行為の効力によって左右されることはありません。つまり物権的法律行為はいわゆる独自性及び無囚性を保持することになります。この主義はドイツ民法の採用するところであるために、独法主義ともいわれます。
この二主義は、それぞれ一長一短があり、つまり意思主義によればなんらの形式を必要としないために手続は簡単ですが、いつ物権の変動を生じたかを外部からは知ることはできないので取引の安全が害される恐れがあること。形式主義では登記や引渡がなげれば物権変動が生じないために、手統は煩雑であって取引上不便ではありますが、物権変動の時期が明白であるために、取引の安全の見地からすれば優れています。
民法では物権の変動は、当事者の意思表示のみに因りて、その効力を生じると規定しています。この現定からすれば、民法が意思主義をとっていることは明らかです。したがって物権が変動するには意思表示さえあればよいのであって、その他に登記とか引渡とかの形式を必要としません。登記や引渡は物権変動の対抗要件であるにすぎないことになります。このように民法では、意思主義をとっているために、例えば地上権や低当権を設定し、手附を交付する場合のように当事者が物権変動のみを目的とする意思表示をなす場合には、その意思表示のみによって物権変動が生じることは間違いありません。しかし売買とか贈与とかの債権的行為に基づいて物権変動が生じる場合に、民法176条にいわゆる「意思表示」とは債権的意思表示をも含むのか、厳格に物権的意思表示のみに限るのかについて解釈上学説が分れています。
物権行為が、その原因行為、例えば売買契約とは別に所有権移転のための特別の合意が独自に存在すべきものと解するかどうかによって、独自性を肯定する立場と否定する立場があり、いずれの立場に立つかによって、その効力発生に違いがでてきます。ドイツ民法は肯定する立場に立ち、日本民法176む条の解釈に当たっても「意思表示」は物権的意思表示を意味すると解され、独自性を肯定する学説があります。しかし、判例、学説の大勢はこれを否認しています。つまり176条の意思表示には原因行為を含み、この意思表示さえあればそれとは別に物権的意思表示を必要とせずに物権は変動すると解しています。この問題は物権変動の時期との関係で検討されねばならないところですが、物権行為の効カについてその原因行為の有効、無効がどうかかわるかの問題にもつながります。いわゆる物権行為の無因性の問題です。ドイツ民法では、不動産を買って登記した場合は、その売買契約が無効であっても、常に有効に所有権を取得するとされ、それが転売されても法律関係が覆えることはないとされています。いわゆる物権行為の無因性が認められ、その限りにおいて取引の安全が確保されていることになります。日本民法の下においては、当事者間で無因の旨の待約をすればそれに従ってもかまいませんが、その待約がない場合、及び特約があってもその公示がない場合は無因性は認められません。

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