相続の効力2

Aは三人の子B、C、Dを残して死亡しました。
AはEに対し九〇万円の債権を有していました。他方、BはEに三〇万円の代金債務を負担しています。Bは、Eから弁済の請求をうけるや、自己が相続したと考える九〇万円の三分ノ一、すなわち三〇万円をもって、自己の債務と相殺すると主張しました。認められるでしょうか。
AはFに六〇〇万円の代金債務を負担していました。Fは、Bの財産について、二〇〇万円の債権につき(Bの持分としての債権額)、強制執行をすることができるでしょうか。
Aは、G、HとMに対し九〇万円の連帯債務を負担しています。Aの死亡によって、Aの負担している連帯債務はどのように相続されるでしょうか。

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金銭債権その他の可分債権は、民法八九九条によって法律上当然に分割されて各相続人に帰属するというのが判例です。もっともそうはいっても、債権は債権者の自由意思によって全部または一部を処分できるから、遺産分割のさいに自由にその帰属を決めることができます。この考えをとれば、各相続人は、相続分に応じて帰属した債権を他に譲渡することもできるし、それをもって自分の債務と相殺することもできることになります。また民法九〇九条但書が存在する以上、遺産分割までは遺産債権は合有的に帰属すると構成する立場に立っても、持分権に相当する額をもってする相殺は有効と解さざるをえません。Bの相殺の主張は有効です。
判例は、金銭債務その他の可分債務は当然分割され、各相続人はその相続分に応じて責任を負うとしています。したがって、遺産債権者は、その範囲内で各相続人の固有財産に執行することが可能になります。しかしこのような構成は、各相続人は相続分に応じた弁済をすればよいことを意味するため、相続人中に無資力者がいるとその相続人の負担部分が焦げ付くということになります。そのため、遺産全体に対する執行を可能にする構成、遺産債務の不可分的帰属ないしは含有的帰属が試みられています。現行法の解釈としては、相続財産の合有的債務引当てと、相続人の固有財産を引当てとする個人的債務(分割債務)が併存しているとみるのが妥当です。遺産分割後は、相続人は分割債務を負うに止まります。
連帯債務の相続についても、当然分割主義の立場に立って、原債務は当然分割され、各相続人は各人の承継した債務の範囲を負担部分として、本来の連帯債務者と連帯責任を負う(不等額連帯債務)、というのが判例です。しかし連帯債務は全部の給付を本質とするのであるから、連帯債務は給付の不可分的要素(連帯性)を保持しながら、相続人に承継される、つまり、各相続人は全部を給付する義務を負い、被相続人の負担部分が各相続人の相続分に応じて分担される、と解するが素直です。

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