責任能力と失火責任

A所有のアパートには、BおよびCの二世帯の家族が居住しています。Bが石油ストーブに点火したまま、一〇歳の子Dに留守番をさせ外出していたところ、Dは近所の九歳の友だちEを自宅につれこみ遊戯中、Dが石油ストーブを誤ってけとばしたため、火がEの着衣に燃えうつりEは重傷を負いました。しかも火災を生じ、アパートを全焼させました。
CおよびEは、Dに対して損害賠償を求められるでしょうか。Bに対してはどうでしょうか。
Eの賠償額の算定に当たりEの過失を 斟酌できるでしょうか。
アパートの所有者Aは、賃借人Bに対して、建物の焼失について損害賠償を求められるでしょうか。

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未成年者は、その行為の責任を弁識するに足るべき知能をそなえていなければ賠償責任を負いません。この責任能力は、人によっても行為の種類によっても違いますが、限界的な場合には、結果の当否がキメ手になります。ふつうは、責任能力を否定した方が被害者にとって有利です。そのような場合に限って、より賠償資力のある親権者や後見人などの責任を追及しうることになるからで、判例も、この線に沿い、一二歳程度の少年の責任能力を否定しています。そこで親権者の責任ですが、失火責任法は、重過失のある失火者の責任を定めるだけで、火を出した者が責任無能力の場合については規定を欠いています。同法判定の趣旨として、失火による損害が、気象条件、建物の構造や密集度、消防設備の状況などとからみあっており、しかも、しばしば巨額にのぼること、これを自らも大きな打撃を受けるのを常とする失火者に負担させるのを不当とする法慣習があったこと、などがあげられています。この趣旨を貫くなら、民法七一四条一項但書の適用を否定し、親権者は、無能力者に対する監督面で重過失がある場合に責任を負うことになります。判例は、被用者の重過失による火災につき、使用者の責任を問う場合には、選任、監督面での重過失を必要としないとしていますが、これは、使用者が、被用者をとおして利益をあげていることに対応するものとみられ、したがって、そうした事情のない本問の場合に、同じに扱う必要はないわけです。
なお、失火責任法の適用があるため、Cは、BやDに対し損害賠償を請求することができません。
過失相殺をするには、被害者に責任能力があることを要すというのが従来の判例でしたが、過失相殺は、公平の見地から損害額を軽減するだけで、不法行為責任を負わせるわけではありません。そこで、近時の判例は、事理を弁識するに足りる知能があればよいとし、八歳程度の被害者についても過失を認定し、学説もこれを支持しています。
失火責任法の文理や制定の趣旨からして、賃貸人が債務不履行(賃借物返還義務の不能)を理由に損害賠償を求めるときは、同法の適用はない、と解されています。

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