終身定期金と和解

二〇歳のAは、自動車事故により七〇歳のB女に重傷を負わせた。A、B間で話しあった結果、AはBに毎月一万円ずつBが死亡に至るまで給付する旨の示談が成立しました。
示談は民法上の和解と同一でしょうか。
事故後四年従って、Bに予想しない後遺症があらわれ、診断の結果、入院治療を要することが判明しました。BはAに増額請求をなしうるでしょうか。示談でなく、本例と同一内容の調停が成立した後、後遺症があらわれたときはどうなるでしょうか。
逆にBの負傷は、示談成立当時予想したより軽かった場合、Aからの減額請求は認められるでしょうか。
示談後、もしAが事故を苦にして自殺したとき、BはAの相続人に対して給付を請求できるでしょうか。
本例と異なり、A、B間で示談が成立しなかった場合、BからAへの損害賠償請求において、裁判所は定期金賠償の判決を下すことができるでしょうか。またBの逸失利益はどのようにして算定されるでしょうか。

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示談を和解類似の一種の無名契約とみる説もありますが、通説は民法上の和解とみています。
示談当時予想しなかった後遺症についての損害賠償請求は認められます。その根拠につき、錯誤説、黙示の解除条件説、事情変更説等もありますが、判例は、後遺症が示談の対象でない別個の損害で、それには示談の効力が及ばないとしています。もっとも損害賠償の方法として、当然に毎月の給付の増額になるかについては後述のように問題があります。裁判外の示談のほか、調停の場合でも同様です。
示談当時予想したよりBの負傷が軽かった場合には、その負傷は、示談の争いの対象であったから、錯誤の主張は排斥されます。
Aが自殺しても、その相続人は、相続放棄、限定承認の手続をとらないかぎり、Aの債務と責任を承継し、BはAの相続人に対して給付を請求できます。もっとも権利濫用により強制執行が認められない場合があります。
交通事故による負傷の場合の損害賠償請求については、定期金賠償の判決をし、もし事情がかわればそれに応じた給付内容の変更の余地を残すことが合理的です。ドイツ民法はこれを認めています。日本でもそうした解決をとりえないかどうかが問題とされますが(仮処分についてこれを認めた決定例が多い)、現行民法、民事訴訟法の下では、被害者がこれを求めた場合にのみそのような解決が与えられます。
Bは女性であり、しかも七〇歳です。主婦の逸失利益が認められるかどうかにつき、否定説をとり慰謝料請求のみを認める立場もありますが、女子平均労働賃金や家政婦平均賃金を基準として逸失利益を認めるべきだとする言定説が比較的有力です。ただしBは七〇歳だから肯定説をとっても逸失利益は認めがたく慰謝料請求のみが認められます。

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