贈与

A男は妻子があるのにもかかわらず家を出てB女と同棲し、家庭をかえりみないで数年を過ごしました。しかし、その後Bとの関係が不和となり、Aは家庭に復帰しました。AはBと同棲中、A所有の建物をBに贈与する旨を約していました。Aと別れた後、BはAに対し建物の所有権移転登記を請求しました。
A男は、贈与が書面によっていないことを理由にこれを取り消しうるでしょうか。もし建物の贈与が、B女と別れるための手切金代わりの性質をもつときはどうでしょうか。
B女が建物の引渡をうけているとき、BはA男に対し移転登記を請求しうるでしょうか。
移転登記の請求のほか、B女はA男に対し不法行為を理由に損害賠償を請求します。Aは、BがAに妻子があることを知りながら同棲したから、Bの請求は棄却されるべきだと主張します。Bの請求は認められるでしょうか。またAの妻子はBに対し不法行為による損害賠償を請求しうるでしょうか。

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書面によらない贈与でも、履行の終わっている部分は取り消す(撤回する)ことができません。履行の終了によって、贈与者の意思が明確となり、軽率になされたものでないと認められる以上、贈与者に取消を認め受贈者から贈与物の取戻をさせるのは適当でないからです。問題なのは、なにが履行の終了に当たるかであるが、不動産の贈与では、目的物の引渡か登記の移転のどちらか一方があれば、それで履行の終了とみてよく、引渡は現実の引渡にかぎらず、簡易の引渡、占有改定、指図による占有移転でも差支えません。なお、本間におけるBは婚姻外の性関係(いわゆる重婚的内縁関係)にある女性ですが、AのBに対する贈与が、この性関係を断つためのものであるとすると、これは、単純に贈与とみるべきではありません。むしろ、慰謝料ないし償金的性格をもつもので、金銭を支払う代わりに、つまり、手切金代わりに物を渡す(譲渡する)という約束とみるべきであるから、これに五五〇条本文の取消を適用するのは適当でありません。履行の終了の有無にかかわらず取り消せないと解すべきです。
BがAから建物の引渡をうけているとすると、この引渡の時に所有権の移転があったとみてよく、BがAに対し所有権移転登記を請求することができます。
本問の贈与が手切金代わりだとすると、これで損害賠償はすべて解決済ということになり所有権移転登記請求しかできません(二重取りは許されない)。しかし、そうでなければ、人格権侵害による損害賠償請求もできますが、七〇八条の適用があるから、もし、女性の方が、妻子ある男性であることを知りながら同棲していたのだとすると、不法性は女性にもあることになり、男性の不法性と比較考量のうえ後者の方がいちじるしく大でなければ損害賠償請求は認められません。また、妻が、この女性に対し人格権侵害による損害賠償を請求することができることはもちろんですが、子(特に未成年の子)も損害賠償を請求することができる場合があります。

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