同時履行の抗弁権

AとBとの間に机の売買契約がなされ、第一回は、AがBに一〇〇個の机を給付し、それと引換えにBがAに代金一〇〇万円を給付すること、第二回は、それから六ヵ月おいて、同じく一〇〇個の机を給付し、代金の一〇〇万円はそれから三ヵ月たって支払うというのが契約の内容でした。
定められた第一回の日に、BがAに、これから金を持参するからといったところ、Aは、職人の都合でニカ月後にしてくれといいました。Bは、どうしても机をいれる必要があったので、憤慨してAを被告として訴を起こしました。この場合、Aは同時履行の抗弁権を提起することができるのでしょうか。そして判決はどうなるのでしょうか。
第二回の定められた日にBはAに机を運ぶようにいいました。Aは、Bの資力が急に悪化し、代金をもらえる可能性がなくなってしまっていることを知って、そのような事情のもとでは、代金と引換えでなければ渡すわけにはゆかないと主張しました。この主張は認められるでしょうか。

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双務契約の当事者の一方が履行の提供をしたが、相手方はその受領を拒絶するとともに自己の債務の履行の提供をも拒絶した場合、その者は請求者に対し同時履行の抗弁をもって抗しうるでしょうか。肯定説と否定説とに分かれます。肯定説に立つときは引換給付判決がなされるのに対し、否定説に立つときは被請求者に単純給付判決がなされます。否定説の根拠は、「相手方カ共債務ノ履行ヲ提供スルマテハ」という条文の文言と、請求者が適法な提供をなしたのに受領せずしかも提供を継続せよという形で実質的不利益を強いるのは公平に反するとするところにあります。これに反し肯定説は、請求者がいったんは提供をしたが後に無資力となった場合にこれを認めないと、被請求者が先履行を強いられ公平を欠くにいたる、履行の提供は債務を免れしめるものではないから、両債務の履行上の牽連関係はなお存続し被請求者は同時履行の抗弁権を主張しうるものと解すべきだとします。判例は宵定説を採っています。いずれが公平と解しうるかは価値判断の問題といえます。さて、双務契約の当事者の一方が先給付義務を負っているときは、その者は同時履行の抗弁を主張することはできませんが、相手方の財産状態が悪化した場合には先給付義務者にも不安の抗弁が認められ、それによって履行を拒むことをうるとする考え方があります。もしかような不安の抗弁が認められるものとすれば、設問の場合のように、自らの責に帰すべき事由がありながら相手方の提供を受領せず自己の履行も拒絶したAには、同時履行の抗弁を認めず、ただ不安の抗弁の認められる事情のあるときには個別的にこれを保護するという、いわば折衷的な解決も可能となります。
すでに述べたように、Aは先給付義務を負っているのであるから本来ならば同時履行の抗弁は主張しえないのですが、不安の抗弁を認めれば、本問では、Bの資力悪化が契約成立後でありしかも反対給付を受けられる可能性がないほどの状態であるから、Aはこれにより履行を拒みうることとなります。

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