契約の成立

Aは旅先でB骨董店を訪れたところ、ショーウィンドウに江戸時代の鈴と硯とが置いてあり、硯には一万円と値段がでていました。中に入るとすばらしい机がおいてありました。Aがショーウィンドウにある鈴と硯とをもらいたいといったところ、B骨董店の主人は、あれは、お客の眼をたのしませるためにおいたもので、売るわけにはゆかないといいます。Aは契約の成立を主張できないのでしょうか。そしてAは、この机がほしいが幾らするかといったら、一〇万円だという。主人は、一週間お待ちしますから、その間に返事をしてほしいといいます。家に帰って考えた末に買うことにして、承諾の速達便をポストに入れた。ポストに入れてから、Aは妻からそんな高いものといわれて、思い直し、すぐ電報をうって、承諾の速達を出したが取り消すといいました。速達便より電報の方が早くつきました。契約の成立についてどう考えるべきでしょうか。
契約は申込と承諾によって成立します。Bがショーウインドウに鈴と硯を陳列してある行為が申込とみられれば、Aがこれをもらいたいといったことによる承諾と合致して契約が成立するため、Bは容易にこれを取り消しえなくなります。そこで、まず鈴については、陳列されてあるだけであって値札さえついていなかったのであるため、申込の誘引とも考えられず、この場合契約が成立しないことは明らかです。値段のついていた硯については、正札附の商品の陳列を申込と解する説と申込の誘引と解する説とがあります。骨董商が店頭の品物を売る場合は、相手方が誰であるかに重きを置かない契約であることを強調すれば申込と解する余地もありますが、一般には正札札の商品の陳列は申込の誘引と解するのが通説であり、したがって、硯についてもAは契約の成立を主張することができません。

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民法は、九七条一項で意思表示の効力発生につき到達主義の原則を表明したが、五二六条一項では承諾についてはこの例外として発信主義を採るかのように定め、他方五二一条二項では、承諾期間の定めのある申込についてその期間内に承諾の通知を受けないと申込は効力を失うとしており、あたかも時効におけるのと同じく、これらの規定の相互の関係の理解をめぐって様々な学説が対立しています。ここではすべての学説にわたってその詳細を紹介することはできませんが、おおよそ、(1)到達主義の原則を重視し契約の成立をその到達にかからせようとするものと、(2)承諾については発信主義をできるだけ尊重しようとするものとに分けることができます。本問は、承諾期間の定めがあり、期間内に承諾を発信したがその到達前にこれを撤回したというケースであり、(1)説をとるものは撤回の効力を認め、(2)説に立つものはこれを認めません。近時の傾向としては、(2)説中の解除条件説、すなわち所定の承諾期間内に承諾が到達しないことを解除条件として契約は不成立とする説が有力であるといえます。承諾発信後は申込の撤回が認められないこととの均衡という点も、承諾の撤回を認めない理由となります。

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