間接反証

Z女の子Xは、Y男に対して認知の訴えを提起し、次のように主張しました。YはXが生まれる少し前からZを見棄てて寄りつかなくなってしまったが、それまでは一年以上Zと同棲生活を営んでいた者で、Xはその間に懐胎されて生まれたYの実子に間違いない。
訴訟上、X主張の期間中ZとYが同棲生活を送っていたことは立証されましたが、XがYにより懐胎させられたYの子であることの立証は必ずしも十分ではなく、鑑定によっても、X・Y開に血液型の背馳はないが、父子関係があるともないとも断定できないとされました。このような場合、裁判所は請求認容の判決をすることができるでしょうか。
Yが訴訟上「ZがXを懐胎した当時、Y以外の男性との間にも情交関係があった」と陳述したとすれば、それは否認か、抗弁か。また陳述した事実の立証は本証か、反証か。
X勝訴の判決が確定後、Xの真の父親であると名乗るA男が現われ、血液型などによる鑑定結果からもその父子関係が断定できるとすれば、Yは確定判決の効力を争うことができるでしょうか。

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認知訴訟の要件事実であるX・Y間の自然的血縁関係を直接証明することは、きわめて困難であるから、その認定は通常間接事実の証明と、これに基づく主要事実の推論によります。その場合問題となる間接事実としては、(1)懐胎期間中にZ・Y間に情交があった事実、(2)懐胎期間中にZとY以外の男子の間に情交がなかった事実、(3)YとXの間に血液型の背馳がない事実、(4)人類学的観察により測定される、Y・Xが親子である蓋然性、(5)Yが父としての愛情を示した等のXに関係するYの言動の五つがあります。大審院判例は(2)の情交の事実の不存在の証明を破格に要求しましたが、最高裁判例は、(1)(3)の事実の証明に、(2)の情交があったと積極的には認められないという事情や、(4)あるいは(5)の事実の証明が加われば父子関係を推認しうる、としました。この判例の立場は、父子関係認定の基礎となる経験則選択の範囲を広げたものと解すべきでしょう。認知訴訟では職権探知主義が妥当するから、裁判所は前述の間接事実の存否について可能な限り調査すべきでしょう。その結果認定される事実から父子関係を推認するかは、個々の事案に応じた経験則採用の問題です。
この陳述は不貞(多数関係者)の抗弁といわれますが、懐胎期間中の性交の事実から父子関係を法律上推定する推定規定のない日本の法の下では、父子関係の存在の証明責任は全面的に原告側にあるから、不貞の抗弁は真正の抗弁ではなく積極否認です。個々の事案において種々の間接事実から父子関係が推認できると認められる場合には、不貞の抗弁が推認の基礎たる径験則の適用を動揺させることがあります。この場合、不貞の事実の証明は本証です。主要事実について裁判官の心証が一応形成されているからです。
このように主要事実を基礎づける間接事実と矛盾しない間接事実の証明によって経験則の適用を動揺させることを間接反証といいます。これによって、不貞の事実存否の証明責任が原告から被告に転換されることになり、当事者間の実質的公平が保たれます。その他、不法行為訴訟などにおいても同様です。
Aの出現・鑑定結果は再審事由にあたらないから、Yは判決の効力を争いえません。AがXを認知しようとする場合は別です。

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