弁論主義の排除

X女とY男は、平成一二年一〇月二二日に挙式し、戸籍上同一三年四月一日付で婚姻の届出をし、同一四年六月一一日付で協議離婚の届出をしていますが、Xはその協議離婚がXの意思に基づかない届出によるものであり、無効であるとして、離婚無効確認の訴えを提起しました。
これに対し裁判所は、XもYも主張しないのに、XとYの婚姻はそもそも、すでに双方の合意によって内縁関係を解消した後に、Xが出産した子供を嫡出子として届け出るためになされた、婚姻意思を欠くものとしてその効力を認めがたいと判示したうえで、戸籍上の本件婚姻および協議離婚の記載は、真実に反するものではあるが、Xには戸籍の訂正をすべき現実の具体的必要性を認めることができず、戸籍の記載を存置しておいても婚姻関係が存在しないという現実とは合致し、なんらの実害を生じないとして、確認の利益を欠くことを理由に、訴えを不適法として却下しました。
裁判所が、婚姻がそもそも婚姻意思を欠く無効なものであったと認定したことは違法でしょうか。
認定が適法であったとして、確認の利益を否定した点は妥当でしょうか。
ほかに弁論主義の適用が排除されるのはどのような場合でしょうか。

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婚姻の意思を欠く婚姻の無効は形成無効であるか当然無効であるか。訴訟法学者によれば形成無効であり、したがって判決によってのみ無効が確定され、それまでは何人も無効を主張できないから、訴訟上もたとえ当事者の主張があるときでも認定できません。他方、民法学者によれば当然無効とされているから何人でも主張できるし、裁判所もその主張があれば認定できます。しかし当事者が主張していない場合はどうでしょうか。人事訴訟では当事者の主張しない事実も斟酌できる職権探知が行なわれますが、婚姻事件については「婚姻を維持するため」にと規定されているところから、片面的職権探知を定めたとみるのが通説であり、これに対し、この規定を空文とみて全面探知をなしうるとの見解もあります。これによれば質問の認定はなしうるとも思われますが、しかし、職権による事実の斟酌もその訴訟の訴訟物たる当該請求に関する事実の範囲に限定されるから、離婚無効の訴訟において当事者の主張しない婚姻無効の認定はなしえません。
婚姻の当然無効によって婚姻関係は法的には認められませんが、戸籍上も離婚によって婚姻関係が存在せず、したがって確認の利益がないとされたが、それはあたかも無効な婚姻でもすでに離婚されていれば戸籍上も婚姻関係は存在しないから婚姻無効の利益がないというのと同じで妥当ではありません。ある婚姻が当然無効であれば有効な離婚はないし、したがってその離婚の無効確認の必要はないと考えられるようですが、人事訴訟でも処分権主義は行なわれるのであり、離婚無効の訴えは離婚自体の無効の確定を目的とするのであるから、離婚無効確認の利益は、離婚が無効であっても、「婚姻も当然無効だから」云々ということによって判断されるべきではありません。離婚意思の欠訣による離婚無効を相手方が争っていれば、それだけで確認の利益も認められます。
婚姻事件の他に養子縁組事件や親子関係事件があり、また行政事件訴訟では職権証拠調べが許されています。

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