釈明権

Xは、Y1会社および(Y1会社の代表者)に対し、次のような請求の訴えを提起しました。「Xは、Aに木箱を納入していたY1会社から、Y1に代わって納入してほしい旨の依頼を受け、Aに木箱を売り渡す契約を結び、その納入をしました。売買契約に基づくAの代金債務につきY1、Y2は連帯保証人となりました。よって両名に対し連帯保証服務の履行を求める」。
ところが控訴裁判所は、第二回弁論期日において、Xの訴訟代理人に対し、「あなたの側の主張は要するに本件取引において、木箱の納入はY1名義でなし、Xに対する代金支払義務は同会社において負担する約束であり、Y2は債務について連帯保証をしたという趣旨ではないのか」と尋ね、Xの訴訟代理人は「その通りである」と陳述したにとどまりました。
控訴裁判所は、この事実を証拠その他により認定してX勝訴の判決をすることができるでしょうか。
裁判所による釈明の不行使または行使が上告理由となるのはどのような場合でしょうか。また、釈明権と釈明義務の範囲は異なるといわれるのはどのような意味でしょうか。

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第一審ではAのXにたいする代金債務のためのY1、Y2の連帯保証債務が訴訟物であり、第二審ではY1のXにたいする代金相当額の支払債務とY2のその連帯保証債務が訴訟物であるとみれば、一審と二審とでは訴訟物を異にし、裁判所の釈明権の行使は別個の請求原因にわたっています。しかし、二審での釈明にあらわれた「木箱の納入はY1名義でなされた云々」ということが、売主はY1であるが木箱を実際に納入したXがAから直接に代金を受領することができ、Aが支払わない場合にはY1、Y2がそれを支払うことであるとみれば、請求原因は異なりません。しかし前者であるとすると、「その通りである」と答えればそれだけで請求原因の変更がなされるほどの釈明権の行使は公正を欠き正当な範囲を逸脱していないかが疑問になります。しかし多数説、判例はそれでも許されるとします。これに対して少数説は釈明権の行使が当事者間の公平を著しく害する場合には許されないというが、この見解によっても、その違法な釈明に応じてなされた訴訟行為は有効です。
釈明権と釈明義務の範囲が異なるというのは、釈明すべきかどうかが裁判所の裁量にまかされている範囲よりも、釈明しないと上告理由になる範囲が狭いということです。裁判所による釈明権の行使はいかに多く広く行なわれても、それがゆきすぎで弁論主義に反して上告理由となることはない、というのが現在の多教説です。ではどのような場合に釈明の不行使が上告理由となるか。ある事実、証拡が提出されないまま判決がなされ、確定すると既判力の遮断効によりもはやその事実、証拠は提出できなくなるが、もしそれが提出されていれば判決の結論が異なるような場合、その判決がまちがいなく正しかったとはいえません。しかし、適正な判決に必要なすべての事実、証拠の提出か促すということは不可能です。そこですでに主張されている法効果、事実、証拠を手がかりとして、例えば主張されている法効果の認められるために不足している主要事実、立証されてはいるが提出されていない事実、また主張事実のために提出されていない証拠などで、もしそれが提出されるとされないとでは判決の結論が異なってくるような場合には、裁判所には釈明すべき義務があり、釈明しないことは上告理由になるといえます。

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