弁論主義

Xは、Yが占有中の家屋はXの父Aの所有であったが、平成一九年五月一七日Aが死亡し、Xは相続によってこれを取得したものであるから、その明渡しを求めると主張して訴えを提起しました。Yはこれに対し、「自分は平成六年三月下旬Aより本件家屋の贈与を受け爾来今日まで平穏に使用して来た」と主張しましたが、裁判所は、「Aは平成七年三月頃Yに対し、自分の死亡の晩にはその居住していた本件建物をYに贈与することを約した」と認定し、平成一九年五月一七日A死亡により死因贈与の効力によって家屋の所有権はYに移ったと判断し、請求棄却の判決をしました。
このような事実認定は許されでしょうか。
かりにYの主張が具体的日時を示さず「自分はAより本件家屋の贈与を受け今日まで平穏に使用して来た」というのであった場合、設例のような事実認定があったとしたら、どなるでしょう。さらに「自分は第三者より本件家屋を取得し今日まで平穏に使用して来た」とのみ主張したときはどうでしょうか。
かりにYの主張に対して、裁判所が「Yは平成六年三月頃Aより本件家屋の譲渡を受けた」と認定したとすればどうなるでしょうか。裁判所がYの時効取得を認めて請求棄却の判決をした、とすればどうでしょうか。

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主張事実と認定事実は社会通念上同一とみられれば、多少相違があってもよいといわれます。そこで、「自分は平成六年三月下句Aより云々」が主張事実であり、「Aは平成七年三月頃Yに対し・・・」が認定事実であるとすると、前者であればYは平成六年三月までに権利を取得しているのに対して、後者であれば平成一九年五月一七日に所有権を取得するのであるから、両者は時期の点では大きな違いがあります。しかし裁判所は当事者の主張を合理的に解釈してうけとらなければならないし、また主張された事実が証拠調べの結果、より詳しくより正確に判明した場合は、主張された事実のより具体化されたものとして認定できます。設例でYの主張は生前贈与か死因贈与かを意識的に区別して前者を主張しようというのではなく、Aから無償で所有権の移転を受けたことがある という程度をいうのであるから、証拠調べによって契約内容がより正確に判明した場合には、そのとおりに認定することができます。しかし契約内容の一部である成立の時期については一年も違いがあるのだから、釈明はすべきです。
主張事実は具体的な時と所によって特定して主張されなければなりません。そこで前段では事実の主張が全然なかったといえるかは問題ですが、後段でも誰から取得したのか不明であり、また取得原因もいろいろ考えられるから、前後段ともこれだけでは相手方はどのように防禦していいかわからず不意打ちのおそれもあるから、裁判所は釈同権によって主張をもっと明確に限定させるべきであり、このままでは設例のような認定はできないというべきです。
主張事実が証拠調べの結果もっと具体化され、同確化された形で認定事実とされることは許されますが、例えば「弁済」の主張に対して「免除」が認定され、贈与の主張にたいして、売買が、解除の事実のもとに、取消しの事実が認定されることは許されません。同じように、贈与の主張にたいする有限の譲渡の認定は許されません。
時効取得の客観的要件は「自分は平成六年三月下旬Aより、爾来今日まで平穏に使用して来た」という陳述により主張されていますが、その援用がないので判決の基礎としては採用できません。

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