責問権

X・Y間の建物所有権確認等請求事件で、証人Aの再尋問がなされましたが、裁判所はAにあらためて宣誓させることかく、単に「前回の宣誓を維持する旨を宜し」ただけで尋問しました。
この処置が問題となった上訴審において、裁判所は次のように判示しました。「同一審級において同一証人を再び尋問する場合においても、尋問事項を異にする限り再び宣誓をなさしめることを要することは所論のとおりであるが、宣誓せしむべき証人を宣言せしめずして尋問した場合と雖も、当事者が遅滞なく異議を述べないときは、責問権を失ったものというべきである」。この判示は正当でしようか。
次の場合は、責問権の放棄ができるでしょうか。
(イ) 訴訟能力、当事者能力を欠く者が訴状を提出したとき。
(ロ) 訴状、呼出状、終局判決の送達が送達受領権者以外の者になされたとき。
(ハ) 訴えの変更につき書面を提出しなかったとき。
(ニ) 宣誓させてはならない証人に宣誓させたとき。
(ホ) 法定代理人を証人として尋問したとき。
(ヘ) 忌避申立後、まだその裁判が確定する以前に当該裁判官が急速を要しない証人尋問を行ない、その後忌避申立てが理由なしとされたとき。

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判示は正当。すべて証人にはその尋問前に宣誓させることが原則として必要であり、同一証人が同一審級で尋問をうける場合でも、尋問事項が異なればあらためて宣誓させなければなりません。もし宣誓させないまま証人尋問をすれば適法な証拠調べとはいえず、その証言をただちに事実認定の 証拠資料とすることはできません。このような場合当事者は異議を述べる権能、責問権を有します。しかし当事者は訴訟手続に関する規定の違背については責同権を放棄することができるし、また遅滞なく行使しないときはこれを喪失します。証人の宣誓に関する規定も責問権放棄の対象となる訴訟手続に関する規定であるため、その違背については責問権を放棄できます。宣誓のない証言がこれのある証言とその価値を全く同じにみられるかは問題がありますが、結局は裁判官の自由心証にまかされるから、責同権の放棄によって宣誓がないという瑕疵は治癒されるとして差し支えません。
責問権の放棄ができる手続違背かどうかは、当事者の利益を考慮した任意規定違背であるかどうかによって決まるから、この点から判断すると、(イ)当事者能力、訴訟能力に関する規定は強行規定であって訴訟手続に関する規定ではないので放棄はできません。しかし訴訟能力を欠く者の訴訟行為には追認が許されます。(ロ)訴状、呼出状の送達については放棄できますが、終局判決の送達は不変期間の起算点となるので通説は放棄を認めていません。しかし判例は放棄の対象になるといいます。
(ヘ)忌避の申立てがあったときは、四二条が適用されます。しかし、急速を要しない行為がなされたときでも、責問権を放棄できるか。なるほど忌避制度は裁判官につき公正を妨げるような事情があるとき職務執行から排除する制度であり、また忌避事由も裁判官と事件との関係から客観的に判断はされますが、しかしその職務からの執行の排除も当事者の申立てにかからしめ、またその裁判官の面前で弁諭すれば忌避もできなくなることを考えれば、質問の場合、責問権の放棄はできることになります。

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