二重起訴の禁止

XはYからその所有の土地を代金一〇〇〇万円で買い受け、その代金支払いのために約束手形を振り出し交付しました。ところがその土地が都市計画の道路予定地にかかっていることが分かったので、契約を解除し、Yに対して一〇〇〇万円の売買代金債務不存在確認の訴えを提起しました。
設例の訴訟の係属中、Xは別訴として支払 いのために交付した約束手形による一〇〇〇万円の手形債務不存在確認の訴えを提起し、さらに別訴として同手形の返還請求の訴えを提起しました。これらの別訴は許されるでしょうか。許されないとすれば、Xとしてはどうすればよいのでしょうか。
Xが一〇〇〇万円の売買代金債務不存在と同額の手形債務不存在の確認ならびに手形返還請求の訴えを併合提起したとします。これに対しYは解除を争い、Xを被告とする売買代金支払請求の別訴を提起できるでしょうか。できないとすれば、Yとしてはどうすればよいでしょうか。
この場合Yは、別訴として手形訴訟による手形金支払請求の訴えを提起することができるでしょうか。
この場合にXが売買代金、手形債務などにつき、訴えではなく調停や起訴前の和解を申し立てその手続が進行中であるとすれば、答えはどうなのでしょうか。

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民事訴訟法二三一条は、同一事件について重ねて手続を進めるならば、二重に訴訟追行を強いられる被告に酷であるばかりか、裁判所にも無用な負担をかけ、矛盾する裁判が下されるおそれもあるので、重複訴訟の禁止を定めています。いかなる範囲で「事件」の同一性を認めるか、同一性を肯定した場合にどのような措置をとるかという二面からの考察が必要です。まず、訴訟物の異同をみると、手形債務不存在確認の別訴については、一部の新訴訟物理論によれば、訴訟物は同一となるが、手形債権と原因債権の法律的異例性を強調する一部の新訴訟物理論や、旧訴訟物理論によれば、訴訟物は別個となります。手形返還請 求の別訴については、請求の趣旨(申立)を異にし、いずれの説によっても、訴訟物は別個となります。ところで、二重訴訟の禁止される範囲については、(1)請求の 趣旨まで同一な場合に限る説、(2)請求原因が同一なら請求の趣旨までが完全に同一である必要はないとする説、(3)請求の基礎が同一であれば足りるとする説が対立しており、いずれが通説ともいい難い。少なくとも、広く重複訴訟を禁じる(3)説によれば、別訴は不適法として却下されます。Xとしては、訴えの追加的変更によるほかありません。
Yによる売買代金支払請求は、債務名義を得られる点でより有利なので、訴えの利益は肯定することができます。しかし、少なくとも(2)(3)説によれば、別訴は許されず、Yとしては反訴によって同一手続内で審判を求めるほかありません。
手形訴訟は証拠方法を原則として書証に限定するなどによって簡易かつ迅速に権利実現を図ろうとする略式手続であり、その特殊性を尊重すれば、とくにYの別訴を許すべきです。ただし、手形訴訟が通常手続に移行する際には、弁論の併合等の措置が望ましい。
既判力による終局的な確定を目的とする判決手続が二重に行なわれることを禁ずるのが、二三一条の趣旨だとされているので、調停や起訴前の和解の手続が進行中であるだけでは、別訴は妨げられません。

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