一部請求

Aは、オートバイに乗って走行中、Yの運転する乗用車と衝突して即死しました。Aの両親X1とX2は、Yに対して損害賠償請求の訴えを提起しましたが、当初、損害二〇〇〇万円のうちX1とX2にそれそれ二〇〇万円を支払えと請求しました。これに対しYは、Aにも過失があったとして過失相殺を主張しました。その後、第一審の係属中X1とX2は二〇〇万円の請求を二五〇万円に変更しましたが、その時には三年の時効期間が経過していた。裁判所はAの過失により三割の過失相殺を認めるのを相当と判断しました。
このような一部請求は適法でしょうか。
二〇〇万円の請求を二五〇万円に変更することは訴えの変更でしょうか。
起訴による時効中断の効力は、それそれ二〇〇万円、合計四〇〇万円以外の請求部分についても生じるでしょうか。
三割の過失相殺を認めるとすれば、結局裁判所は何万円の給付判決をすることになるでしょうか。かりに、Yが訴訟上過失相殺の主張をしなかったとすればどうでしょうか。設例と異なり、Yの過失相殺の主張がなかった場合でも、このような判決ができるでしょうか。
設例の訴訟の判決確定後、残部請求について訴えが提起されたとき、裁判所はどのように処置すべきでしょうか。

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判例は、明示の一部請求と不明示の一部請求を区別して扱い、設例のように、一個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴求した場合には、一部請求は適法であるとします。学説には、常に一部請求を許すべしとする通説的見解と、これに批判的な少数説もあります。少教説の中には、設例の場合には、特定のための標識がないので、一部を特定しえないがゆえに不適法になるとする見解と、債権の全部を訴訟物としつつ給付判決を求める最上限を画したにすぎないと解して適法とみる見解とがあります。
明示の一部請求の場合には、判例理論では、訴えの追加的変更になります。純粋な数量的分割を認めない少数説は、訴訟物に変動を生じないので訴えの変更にあたらないとみます。ただし、訴え変更の手続に関する規定を類推適用します。
判例によれば、設例のように明示の一部請求の場合には、残部について時効は中断しません。しかし、有力説は、時効中断の効果は、訴訟物の範囲とは別に、時効制度の趣旨にかんがみ債権の全部につき生ずるとみます。
過失相殺の仕方としては、各請求部分二〇〇万円からその三割を差し引いて各一四〇万円の支払いを命ずべしとする立場と、損害額全体を基礎としてその三割を差し引いた残額が請求部分を上回れば各二〇〇万円全額の支払いを命じてよいとする立場が対立していました。理論的には問題はありますが、実際上は後者の取扱いが妥当であり、最近、最高裁も、後者を採ることを明らかにしました。過失相殺の主張は必ずしもYによってなされる必要はありません。
判例によれば、明示の一部請求の場合には、判決の既判力は残部の請求に及びませんが、残部は時効で消滅しています(請求棄却)。少数説によれば、既判力の双面性または残額の放棄の擬制によって残部請求は封じられます。

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