任意的訴訟担当

Xは、その経営するスーパーマーケットの資金繰りに窮して、自己の所有地を売却しようとしましたが、その土地をいつからかYが不法に占拠して建物を建ててしまっているので、良い値がつきません。やむなくXは、友人のAに頼みこんで、自分が裁判上の手段によりYを必ず追い出すから、との約束で、土地を高く買い取ってもら い、代金と引換えに所有権の移転登記をしたうえ、X自身が原告となり、Yを被告として建物収去、土地明渡請求の訴えを提起しました。
問題となっている権利義務の主体でない者が、権利義務の主体との約束ないし授権によって、これに代わって当事者として訴訟をすることは、一般的には許されないといわれますが、どういう理由により、例外が認められるのはどういう場合でしょうか。
設例の訴訟におけるXは、原告適格を有するといえでしょうか。
訴訟の継続中に、A自身がYに対し建物収去、土地明渡請求の訴えを提起した場合、裁判所はどのように処理すべきでしょうか。
訴訟の係属中に、AがBに土地を転売し、その所有権移転登記もなされたとすれば、訴訟はどうなるでしょうか。

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利益の実質的な帰属主体の授権によって、この者に代わって第三者が当事者として訴訟を追行すること(任意的訴訟担当)を、自由に許すと、訴訟代理人は弁護士に限るという原則や訴訟行為をさせることを主目的とする信託を無効としている規定が容易に潜脱されることになり、三百代言の跳梁を招くおそれがあるので、任意的訴訟担当は原則として禁じられています。しかしこれらの理由も絶対的なものではないから、合理的な必要性のある場合には、例外的に任意的訴訟担当を許してよいとされます。選定当事者のように法律自身がこれを認めている場合もありますが、明文のない場合にも、たとえば、講金掛戻請求権について講の世話人の訴訟や民法上の組合の財産関係についての組合の代表者の訴訟の場合には、彼らに任意的訴訟担当を認めるのが通説、判例です。この例からも知れるように、訴訟物たる権利関係の発生、管理につき現実に密接に関与している者に授権することは、通常そうするだけの合理的な必要性が認められるから、一般的に許されると解してよいでしょう。
設例のような場合については、従来あまり議論がなされていませんが、Xは売主としてAに土地の占有を移転する義務があり、この義務を履行するためには、どうしても設例のような訴訟をする必要性があるから、このような場合も合理的な必要性のある一類型とみて、Xの原告適格を認めてもよいでしょう。
Xに任意的訴訟担当資格を認めると、その判決はAに対しても効力を及ぼすので、Xの訴訟中に同一の権利関係につきAが別訴を提起することは、二重起訴にあたるから、その訴えは却下されるべきです。
所有権に基づく返還請求権は、所有権から当然に発生するもので、所有権が譲渡された場合、新所有者は前主の返還請求権を承継取得するのではなく、今や自己のものとなった所有権から原始的に返還請求権を取得するのです。しかし、当事者適格との関係では、Aから所有権の譲渡をうけたことによって、Bは紛争の主体となったのであるから、訴訟の承継人と解してよい。このことは、Xが訴訟担当者としてAに代わって訴訟している場合でも同じであるから、BはXの訴訟を承継しうるし、Yからの求めがあれば承継しなければなりません

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