株主総会決議取消訴訟

Xは、Y会社の株主であり、取締役でもありましたが、最近の定時株主総会においてAら五名が取締役に選任され、Xは取締役には再選されませんでした。しかし、総会には、その招集通知が会日のわずか四日前に発送されている、などの事由があったので、Xは、これを理由に、Yを被告として株主総会決議の取消しを求める訴えを提起しました。
問題の決議によって選任された代表取締役Aは、この訴訟においてY会社を代表できでしょうか。
Y会社の株主Zは、この訴訟に参加したい。どのような参加が許されるでしょうか。
訴訟の係属中に、問題の決議によって選任されたAら五名の取締役は、所定の任期を満了して退任しました。訴訟はどうなるでしょうかか。もし、Xが、Aら五名の取締役がその在任中に取締役として多大の報酬を受け、また、過失によりY会社所有の土地を不当に安く売却してY会社に損害を生じさせた事実を主張、立証したとすればどうでしょうか。
Aら五名の取締役の任期が満了するまでに、選任決議を取り消す判決が確定したとします。この判決は既判力を有するでしょうか。

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決議取消訴訟は、形成訴訟であり、取消判決が確定するまでAは取締役たる地位を失わないのでAは会社を代表して訴訟でき、かりに取消判決が確定してもその遡及効の影響は受けないと解すべきでしょう。
Zは自らも原告適格をもち、かつXの訴訟の判決効を受ける立場にあるから、原告側に共同訴訟参加、あるいは共同訴訟的補助参加ができます。Zが決議を適法とし会社側に立ってXの主張を争いたいときも、決議訴訟では会社のみが被告適格をもつとされているから、Y側に共同訴訟参加はできませんが、共同訴訟的補助参加はできます。これと異なり、馴合訴訟を主張するなどZがX・Y双方と対立関係にあるときは独立当事者参加もできます。
決議取消判決の効力が遡及しないと解すれば退任により訴えの利益がなくなると解するのが普通です。通説は遡及効を認め、ある種の場合には訴えの利益が存続することを承認します。しかし具体的にどんな場合なのかは明らかではありません。「多大の報酬」が違法だとすれば取締役の責任を直接生じさせるため、その追及の前提として取消判決により取締役資格を遡及的に消滅させる必要はなく、訴えの利益はありません。逆に違法でなければ、取消判決を得、取締役でないのに受けた報酬に対して会社は不当利得返還を求めうるから訴えを続ける実益があります。このことは報酬が「多大」でなくてもいえますが、取締役の決議の瑕疵についての善意、悪意が問題となりえます。「過失ある安価売却」は違法であるため、その責任追及には取消判決は必要ではありません。また、いずれにせよ売却の相手方は保護されるべきです。
形成判決に既判力はないとの見解もありますが、通説は既判力を認めます。その結果、Aらは実は決議に瑕疵はなかったと主張して損害賠償を求めたりはできません。また、近時の一部の学説は、将来同じ瑕疵を帯びた決議がなされた場合、その取消しのために既判力が及ぶとします。

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