給付の訴え2

Xは、Y住宅会社に頭金一五〇万円を支払って融資付分譲住宅を買い、Yは、融資金八五〇万円につきこの住宅に抵当権の設定を受けました。Xは、その後、数年かかってようやく借入金全額を返済し了えたので、Yに抵当権登記の抹消を要求しましたが、Yは、なお残債務があるといい張って、これに応じません。そこで、Xは、Yを相手どって抵当権登記抹消請求の訴えを提起しました。
裁判所は、審理の結果、八五〇万円の借入金のうちXの返済したのは五〇〇万円にとどまる、との心証を得ました。どのような判決をなすべきでしょうか。残債務が三五万円と認められる場合、あるいは一万円にすぎないと認められる場合にはどうでしょうか。
設例の訴訟において、Xは、「XからYへの金二〇万円の支払いと引換えにYは抵当権登記の抹消登記手続をせよ」との判決を申し立てたとします。裁判所がXの残債務は金三〇万円であるとの心証を得た場合、あるいは金八万円にすぎないとの心証を得た場合には、それそれ、どのように判決すべきでしょうか。
X申立てどおりの判決がなされ確足したとします。その後になって、Xは、残債務は三万円しかなかったことに気づいて、Yに対し、その旨の確認を求める訴えを提起しました。前訴判決の効力は、この後訴に及ぶでしょうか。

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被担保債権が消滅しないかぎり抵当権登記の抹消請求権は発生しないから、Xの請求を認容することはできないはずで、この結論は被担保債権額に対する残債務の割合が多いときは、容易に納得できます。ところが、借入金八五〇万円のう ち未済分が僅か三五万円であるとか、さらに一万円にすぎないといったように、残債務が零に近づくに従って、全面的にXを敗訴させることが果たして妥当な取扱いだろうか、といった疑問が生じます。裁判所は当事者の申し立てない事項について判決することは許されませんが、分量的に可分な請求においてその一部に理由がない場合、申立ての範囲内なら理由のある一部について一部認容判決をすることは許されると解されています。その方が通常原告の意思に合致するからです。無条件の給付請求に対し被告の同時履行の抗弁が認められる場合も、原告の債務の履行と引換えに被告の給付を命じる判決をするのは、同様に一部認容として許されると解されています。現在の給付の訴えに対し将来の給付を命じる判決をするのは、請求の趣旨が異なるから許されないとする通説の立場からすれば、質問の場合、問題はありますがが、一部認容の取扱いを順推して、残債務の支払いを条件として登記の抹消を命じることは許されると解する余地はあります。もっともこれは、全面的勝訴でなければ条件付判決でも満足するという一般的な意思解釈を前提とするから、疑わしい場合は釈明して請求の趣旨を改めさせるのが適当です。
この場合は申立ての範囲が問題となるだけですが、範囲内かどうかについては注意を要する。三〇万円の支払いを条件として抹消を命じるのは、申立てより有利な判決をするわけではないから、一部認容として一八六条に違反しませんが、Xの申し立てた未済分より少ない八万円の支払いを条件とするのは、申立てより軽い条件を付することになり、申立ての範囲を超えるから許されません。この場合は請求の趣旨を改めないかぎり、二〇万円の支払いを条件として抹消を命じるほかありません。
この訴訟では債務額の確認請求も併合されているとみるべきであり、したがって二〇万円の残債務が存在するとの判断に既判力が生じます。

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