給付の訴え1

S市に住むXは、東京に土地を所有しています。久しぶりに上京してみると、空地であったその土地の上に、Xの全く知らない間に、五階建てのビルが建っています。これを建てたのはY会社だときいて、Xは、直ちにYを相手どってビルの収去、土地の明渡しを請求する訴えを提起しました。
本当は、ビルの所有者はAであって、Yではなかったとすると、設例の訴訟において、Yは当事者適格を有するでしょうか。
ビルの所有者はAですが、登記簿上の所有名義人はYである、という場合には、Yに対する収去、明渡請求につき、どのような裁判がなされるでしょうか。
Yは、このビルの地下一階と地上一階ないし三階までの所有者ですが、地上四階および五階はAの所有に属することが明らかになったとします。Yの所有部分についてのみ、収去、明渡しを命ずる判決をすることができるでしょうか。
この場合に、もし、Yに対しビル全部の収去、土地明渡しを命ずる確定判決があり、これに基づいてXが強制執行をしかけてきたとすれば、Aは、どういう手段により救済を受けるでしょうか。

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一般には給付訴訟の被告適格者は、原告によって給付義務者とされる者です。給付義務者かどうかは、訴訟物たる給付請求権(給付義務)の存否の判断と一致するから、給付義務者を被告適格者と考えると、請求を認容できない場合被告は常に適格者でないことになってしまいます。そこで給付訴訟の被告適格の判断としては、原告が給付義務者と主張する者にこれを認めた上で、その者に給付義務がなければ請求棄却の本案判決をするのです。もっとも、原告の主張自体からもともと訴訟物たる給付請求権の義務者たりえない者には被告適格は認められません。例えば設例のように不法占拠を理由とするビルの収去、土地明渡請求においては、義務者たりうるのはビルを所有することによって土地を権原なく占有する者であるから、Xがビルの所有者でないYを相手どったのであれば、Yには被告適格はないことになります。
しかし登記簿上の記載から、XがYに対しビルの所有者として収去、明渡しを求めた場合は、Yが義務者と主張されているのであるから、Yは被告適格をもつ。したがって審理の結果Yはビルの所有者でないため収去、明渡義務がないことが判明しても、請求棄却の本案判決がなされるのであって、訴えが却下されるのではありません。
XはY・Aの両者に対して勝訴判決を得なければ、現実にはビルを収去させるという目的を達することはできません。しかしY・Aの所有権は同一建物の各一部を対象とするというだけで、その収去、明渡義務もそれぞれの所有部分について別個に負っているのであるから、Xは両者を共同被告にしなければならないわけではありません。ビルの一部の所有者たるYのみを相手方とする訴えはもとより適法であるし、また質問の訴訟でYの所有はビルの一部であることが判明すれば、その部分についてのみXの請求を認容するのは、一部認容として許されます。なお同一建物の区分所有者は共用部分を共有しますが、共用部分の収去、明渡しを命じうるかについても考える必要があります。
X・Y間の判決の効力はAには及びません。Aはその所有部分に対する収去、明渡しの強制執行を受忍すべき責任はないから、第三者異議の訴えとこれに基づく仮処分によって執行を阻止できます。

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