訴訟上の代理人2

Xは、R弁護士を訴訟代理人として、Yに対し家屋明渡請求の訴えを提起しましたが、第一審手続中に、裁判所は和解を勧告し、RとYとの間で、Xが裏通りに所有する別家屋をYに賃貸することを条件としてYは係争家屋を明け渡す旨の訴訟上の和解が成立しました。
Rが提出したXの委任状には、委任事項として「Yに対する家屋明渡請求事件に関する一切の訴訟行為」と記載されているだけです。この和解は有効でしょうか。
Xの委任状には、和解についての授権をも明記し、「ただし、立退料の支払いを条件とする即時明渡しの和解にかぎる」との制限が付されていたとします。Rは、明渡しを三年間待ってやる旨の和解をなしうることができるでしょうか。
訴えの提起後、Rは、別の事件における非行が明るみに出て、所属弁護士会から懲戒処分として三ヵ月間業務を停止され、設例の和解に関与したのは、この業務停止期間中であったとします。設例における和解は有効でしょうか。もし、Rの受けた懲戒処分の内容が除名であり、Rが弁護士の資格を失ったことになる場合であればどうでしょうか。

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訴訟をなるべく迅速かつ円滑に進行させたいとする要請と、法定資格者たる弁護士を訴訟代理人としていることを踏まえ、民事訴訟法は訴訟代理人の代理権の範囲を画一的に定めるとともに、これの制限を許さないことを原則としています。他方、当事者の利益を考え、重大な結果を招来する一定の事項については特別の委任を必要としています。和解は特別委任事項であるので、質問掲記のような委任事項の記載では足りません。この和解は本人または適法な委任を受けた訴訟代理人が追認しないかぎり訴訟上効力を生じません。
特別委任事項について代理権の範囲を制限し得るでしょうか。八一条二項掲記の特別委任事項は個別的かつ相互に独立しているので、ある事項についてのみ委任することは可能です。問題は、個々の事項につき内容的に制限することが認められるか否かである。否定説は、代理権の内容的制限を自由に認めることは訴訟手続の迅速かつ円滑な進行を妨げるとします。肯定説は、当事者の利益の保護を重視すべしとします。判例は、訴訟代理人の和解の権限の範囲を広く解しています。訴訟代理権の発生消滅は基本たる関係とは別個であり、実作法に関係なく訴訟法の原則によって規律されるべきであるし、相手方との対応においてその内容を法定しなければならないことが多い和解手続において、代理権の内容的制限を自由に許すことは手続の迅速円滑を阻害するのみならず、それが常に当事者の利益になるとも考えられないので、否定説を採るべきでしょう。質問の和解は有効です。
判例は、弁護士業務停止期間中の訴訟行為の効力については、業務停止は弁護士資格そのものの剥奪ではなく、また、訴訟関仙人の利益、訴訟経済、裁判の安定という見地から、訴訟法上有効としていますが、弁護士登録取消後の訴訟行為については、当事者または権限ある者が追認しないかぎり、訴訟法上無効としています。なお、私法行為説ないし両性説をとるかぎり、私法上の効力については肯定されます。学説は、弁護士資格喪失後の訴訟行為はむろん、業務停止期間中の訴訟行為も、強度の違法性あるものとして、絶対無効と解する見解が有力です。

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