氏名冒用訴訟

S町五〇番地の土地は、Yの所有ですが、Yは、二年前から勤務先Q商社のパリ支店在勤となっています。XはAと共謀のうえ、この土地を売りとばしてひともうけしようと考え、Yの全く知らない間に、Xが、Yを被告として、YからXへの売買を原因とする土地所有権移転登記手続請求の訴えを提起し、Yの住所をA方と偽って、Aが訴状の送達を受け、訴訟を行ないました。
口頭弁論期日には、Aが自分はYであると偽って出頭し、弁論しましたが、裁判所は疑問を感じ問いつめたところ、Aは隠しきれず、Yでないことを認めました、裁判所はどのように処理すべきでしょうか。
被告として出頭した者が、Yでないことに裁判所は気づかずに審理をすすめ、X勝訴の判決がなされ確定しました。Yが帰国してこの事実を知った場合、判決に対し再審の訴えを提起することができるでしょうか。
この場合、Yが再審の訴えでなく、Xのえた所有権移転登記の抹消登記手続請求の訴えを提起したとすれば、前訴判決の既判力との関係はどうなるでしょうか。
設例の訴訟において、AがYであると偽って自身で口頭弁論期日に出頭し弁論した場合と、AがYであると偽ってR弁護士に訴訟を委任し、Rが出頭して弁論した場合とで、Yの求めうる救済の方法は異なるでしょうか。

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当事者の確定の基準につき、意思説や表示説や適格説の立場に立つと、設例の訴訟の被告はYと考えられるので、裁判所としては当事者でないAの訴訟関与を排斥しなければなりません。行動説では、被告らしく振るまったのはAであるから、Aが被告であり、当事者の表示をAに訂正すべきです。
Aを被告とみるときは、判決の効力はAにのみ生じ、Yには及ばないから、Yは再審の訴えを提起しえません。これに反しYを被告とみれば、Yが判決の効力をうけることはもちろんであるため、Yは、訴訟行為をなすに必要な授権の欠訣のあった場合に準じて再審の訴えにより、確定判決の取消しを求めることができます。なお、設例のように、原告と第三者の工作によりYが全く防禦手段をとる機会を与えられないままに、判決が確定した場合には、信義誠実の原則からXはYに対しその判決の効力を主張しえないと解する立場もあります。この見解によれば、再審の訴えは不要ということになります。
Yが当事者で、前訴判決の既判力をうけると解すれば、Yは、再審の訴えによりその判決の取消しをしないかぎり、前訴の事実審の口頭弁論終結時前の事由を主張することは、既判力に抵触するので許されません。ただし、信義則上原告が前訴判決の効力の主張を許されない場合があるとすれば、基準時前の事由の主張も許されることになりますが、このような判決の当然無効が認められるか、認められるとしてどんな場合に認められるかについては争いがあります。
弁護士は誠実に職務を行なうべき職責を有し、受託者として善良な管理者の注意をもって職務を行なうべきであるから、一見A自身が訴訟を追行した場合とは事情を異にするようにみえますが、Yとしては自己が委任したのでない代理人の訴訟追行の結果(判決)に拘束されるいわれはないから、この場合にも再審の訴えが認められます。

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