裁判官の忌避

Xは、A弁護士を訴訟代理人としてYを相手どって建物収去、土地明渡請求の訴えを提起しました。すでに数回の口頭弁論および証拠調べが行なわれたのも、Yは、担当のR判事に裁判の公正を妨げる事情があるとして、忌避を申し立てました。
Yは、忌避の理由として、A弁護士が最近R判事のひとり娘T子さんと結婚した、という事実をあげています。忌避は認められるでしょうか。
忌避の申立てがあったのにかかわらずR判事は、そのままあえて審理を続行し、すでに呼び出してあった証人Wに対する証人尋問を行ない、口頭弁論を終結して、次回の期日には、X勝訴の判決を言い渡してしまいました。この証人尋問や判決の効力はどうなるのでしょうか。
すでに、R判事による判決がなされ、Yは控訴しました。この事実は、忌避申立てに対する裁判がなされるにつき影響を与えるでしょうか。また、Yの控訴後に、忌避申立てを理由なしとする決定が確定しました。控訴審の裁判所はどのように処理すべきでしょうか。
YがR判事の弁論期日の指定の仕方や証拠 の採否などをとりあげて、R判事に対する理由のない忌避の申立てを数回くりかえし、そのために、審理はこれまでずいぶん遅れています。このような忌避の申立てを、R判事自身で、ただちに却下することは許されないでしょうか。

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Xの訴訟代理人AがR判事の女婿であることが裁判の公正を妨げる事情に当たるかどうかが問題です。判例はこの事実は除斥原因にならないことはもちろんのこと、またそのために直ちに忌避事由にもならないとしました。これに対し多くの学説は裁判官と当事者の一方の側と特別密接な関係かおるものとして公正を妨げる事由に当たるものと解し、Yの忌避申立てを認めるべきであるとしています。なおすでに被告が裁判官の面前で弁論をしていますが、忌避原因たるA弁護士とR判事の娘T子さんとの結婚が最近なされたので民事訴訟法三七条二項但書の適用される場合とみることができるから忌避権を失わないものといえます。
忌避の申立てがあると、急速を要する行為を除き手続を停止しなければなりません。そこで証人Wの証人尋問が四二条但書規定に該当しなければ違法となるので、これに基づいて判決をすることは許されません。また判決言渡しは急速を要する行為とはいえないから違法であり上訴により取り消しうる。
判例は、判決が言い渡されたときは、判決は当然無効ではないため、忌避申立ては目的を失うので、申立てを理由なしとする裁判をすべきであるとします。これに対し学説は、忌避申立て後にその裁判官の関与した行為が有効かどうかを判断する必要があることと、申立ての理由があるかどうかは四一条で定める裁判所の専管事項であることを理由として、判決がなされた後においても裁判の目的を失うことがないから裁判すべきだとします。学説の見解が妥当です。Yの控訴後に、忌避申立てを理由なしとする裁判が確定した場合、その行為の効力について、判例は判決言渡しという急速を要しない行為について瑕疵が治癒されて有効となるとみます。これに対し訴訟手続停止中の行為であるから、忌避の申立てに理由があるかどうかに関係なく、言い渡された判決は取り消され、その他の訴訟行為は無効であるとの反対説もあります。
忌避の申立てが、訴訟の遅延のみを目的とする場合には、忌避権の濫用とみて、刑事訴訟法二四条のような規定はありませんが、その裁判官自身が直ちにその申立てを却下できるとの見解に立てば、YのR判事に対する理由のない忌避申立てはR判事自身で却下できることになります。

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