裁判官の除斥

XのYに対する損害賠償請求の訴えを受理したS地裁は、この事件を民事第二部に配付しました。当時の民事第二部の構成裁判官は、A判事、B判事およびC判事補です。この構成のまま、口頭弁論や証拠調べを行ないましたが、審理をほぼ終了した頃になって、B判事は、S地裁からS高裁に転任となり、代わりにD判事が着任しました。
第一審判決では、Xが勝訴し、Yはこれに対してS高裁に控訴を提起しました。この控訴事件を担当した裁判所は、E判事、F判事およびB判事によって構成されています。Yは、B判事につき除斥原因ありとして、除斥の申立をしました。その当否はどうなのでしょうか。
控訴審判決では、原判決を取り消し、事件をS地裁に差し戻しました。原判決に関与したA判事らは、差戻し後の審理を担当できるでしょうか。控訴審でも、Yが敗れ、上告の結果、控訴審判決を破棄し、S高裁へ事件を差し戻す旨の判決がなされたとすれば、原判決に関与したE判事らは、差戻し後の審理を担当できるでしょうか。
控訴審の手続中に、Xの偏にZが補助参加したが、控訴審でもYが敗れ、控訴棄却の判決がそのまま確定した、とします。その後になって、Yは、E判事がZの伯父にあたることを知りました。Yは、どういう手段をとることができるでしょうか。

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下級審の裁判に関与した裁判官を上級審の裁判に再び関与させると、予断をもつ裁判官に再び裁判に関与させることになり、上訴制度をおいた趣旨を無意味にするばかりでなく、裁判の公正を害するおそれがあるから、前審関与を除斥原因としたのです。裁判に関与したとは、たんに基本たる口頭弁論に関与し、または言渡しのみに関与したことでは足りず、裁判の内容決定である評議、判訳書作成に関与した場合であることを要します。
B判事は口頭弁論や証拠調べを行なったが裁判の内容決定には関与していないので除斥原因とはならないため、Yの除斥申立ては認められません。
控訴審たるS高裁が原判決を取り消し、事件をS地裁に差し戻した場合に、原判決に関与したA判事らが、差戻し後の審理に関与できないとする規定はないので、A判事らは審理に関与できるとする説と民事訴訟法四〇七条三項を控訴審の差戻し判決にも類推すべきであるとの説があります。上告審の差戻し判決については、四〇七条三項により原判決に関与したE判事らは、差戻し後の審理を担当することは許されません。これは破棄理由の拘束力を確保するために先入観のない他の裁判官に裁判をさせるのがよいとする趣旨です。なお、かつての判例の立場は、事件の差戻しをした上級審裁判は、差戻し後の下級審との関係では前審とはならないとしたため、上訴審で取り消され、または破棄された裁判は、差戻しまたは移送後の手続との関係では前審の裁判ではなく、かかる裁判に関与した裁判官は差戻しまたは移送後の裁判に関与しても合法と解してきました。しかし大正一五年改正の現行法四〇七条三項により上告裁判所が破棄差戻ししたすべての場合について関与は許されなくなりました。
当事者を広く解して従たる当事者といわれる補助参加人も民事訴訟法三五条にいう当事者に含まれます。そこでE判事が補助参加人Zの伯父にあたるとすれば三五条二号により除斥原因となります。ところで控訴棄却の判決が確定した後は、Yとしては再審によりこの確定判決の取消しを求めることができます。

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