合意管轄

大阪市内での高層ビル建設を請け負ったY会社(本社東京)大阪支店は、大阪の請負業者Xに下請負工事の注文書を発し、Xは注文請負書をYに交付しました。Yの発 した注文書には、本契約に関する裁判所の管轄はYの本社所在地とする。との条項がありました。やがて、下請負工事は完了したのに、Yが請負代金を支払わないので、Xは、その支払いを求めるため、Yを相手どって大阪地裁に訴えを提起しました。
Yは、管轄の合意により、本件については東京地裁だけが管轄権を有すると主張して移送の申立をしました。この場合裁判所はどう処理すべきでしょうか。もし移送の申立てが却下されたとすれば、Yは即時抗告をなしうるでしょうか。
東京地裁だけを管轄裁判所とする合意があったと認められる場合に、それにもかかわらず、Yが大阪地裁で開かれた口頭弁論に出頭して本案につき陳述した、とすれば、裁判所はどう処理すべきでしょうか。
下請負契約に際し、工事の主な内容についてXに錯誤があったため、この契約自体が無効であるとすれば、どの裁判所が管轄権を有することになるでしょうか。
Xから当の下請負代金債権の譲渡を受けた大阪在住のZが大阪地裁に提訴した場合にも、Yは、管轄の合意に基づいて移送を申し立てることができるでしょうか。

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Yの本社所在地の東京地裁に専属的合意管轄が生じたものと解されるので、Xが大阪地裁に訴えを起こしたことは専属的合意管轄に違背するため、裁判所はYによる東京地裁への移送の申立てを認めるべきです。昭和二三年の民事訴訟法改正前には、移送の申立てを却下した決定に対しては不服申立ては許されませんでしたが、現行法ではYに即時抗告が認められます。
特定の裁判所だけに管轄が認められる法定の専属管轄については、他の裁判所はどんな理由によっても管轄を認められませんが、専属的合意管轄の場合は、その性質は任意管轄であって法定の専属管轄ではありませんので、被告Yが専属的合意管轄をもつ東京地裁でなく、大阪地裁に応訴すれば大阪地裁に応訴管轄が生ずるので、裁判所は以後大阪地裁を管轄裁判所として扱うことになります。
管轄の合意は私法上の契約と同時に締結されるのが通例ですが、その要件や効果はもっぱら訴訟法によって規律されるため、下請負契約自体が無効であっても管轄の合意には影響はありません。もっとも私法上の契約の有効な場合を前提として管轄の合意をすることも可能ですが、この場合の合意管轄は私法上の契約の有効を前提とする訴訟についてのみ認められることになります。ここでは下請負契約の無効に基づく訴訟につき合意管轄となった東京地裁が管轄権をもつことになります。
合意の効力が一般承継人に対して及ぶことについては問題がありませんが、特定承継人に対しても及ぶかについては争いがあります。通説は、管轄の合意の効力は、私法上のものではないが、私法的にみるかぎり一種の権利行使の条件として権利関係に附着する利害であるとし、この権利関係が当事者間でその内容を任意に決定しうるか否かを基準として、任意に決定しうる場合には合意の効力もこれと一体をなすものとして譲受人に及ぶと解します。したがって、本問では下請代金債権であるから合意管轄の効力がZに及ぶことになります。それゆえY会社の本社所在地たる東京地裁が管轄裁判所となります。しかるにZが、この合意管轄を無視して大阪地裁に提訴した場合には、Yは、合意管轄違反を理由に東京地裁への移送を申し立てることができます。

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