併合請求の裁判籍

Y1(住所A市)は、Y2(住所B市)から買い受けたトラック一台の代金支払いのために約束手形(支払地A市)を振出交付し、Y2は、これをY3(住所C市)に裏書譲渡し、さらにX(住所C市)が、Y3から裏書譲渡を受けました。Xは、支払期日にこの手形を、Y1に呈示して支払いを求めましたが、不渡りとなったので、Y1・Y2・Y3を共同被告としてC地裁に手形金請求の訴えを提起しました。
C地裁にこの事件の管轄権が認められるでしょうか。
第一回口頭弁論期日には、Xが出頭しただけで、被告らはいずれも不出頭で答弁書も提出していません。訴訟記録によれば、本件の訴状はY1とY2にはすでに送達されましたが、Y3は転居先不明で、訴状が送達されていないことが明らかです。裁判所は、どのように処理すべきでしょうか。
被告全員の応訴がありましたが、第一審係属中に、Xは、Y3に対する訴えを取り下げたので、Y1およびY2は、それぞれ、管轄違いによる移送を申し立てました。その当否はどうなるでしょうか。
審理の結果、XはY2からいったん白地裏書を受けたのですが、自分の甥であるY3にそのまま交付して、Y3からXへの裏書譲渡をさせるという方策をとったことが明らかとなりました。裁判所はどう処理すべきでしょうか。

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手形、小切手については支払地に特別裁判籍が認められることになりましたが、原告が手形金の請求を被告の普通裁判籍に起こすような場合には、なお併合請求の裁判籍の問題が生じます。C地裁に管轄権が認められるか否かは、主観的併合につき、二一条の適用を認めるか否かにより結論が異なります。学説は積極説、消極説、折衷説に分かれ、判例は、ほぼ折衷説の立場にたち、各被告に対する請求のあいだに実質的な関連のある場合、すなわち、訴訟の目的たる権利義務が数人につき共通である場合や同一の事実上および法律上の原因に基づく場合には、二一条の適用を認めるが、実質的な関連性のない場合には、適用がないとします。この説によれば、本問は同一約束手形上の共同被告として五九条前段に当たるから、C地裁に管轄権があることになります。
併合請求の裁判籍を請求の主観的併合の場合にも認めるためには、併合請求の審理を現実になしうる状態がある時期において発生したことが前提となるから、同条の管轄発生の原因をなす被告に対し訴状が送達されねばなりません。ところがY3は転居先不明で訴状が送達されていない以上併合請求の裁判籍は認められません。これが認められるためには、申立てによりY3に対し訴状の公示送達を求める必要があります。
設例によると原告がC地裁に併合請求を起こし、C地裁が併合裁判籍をもつことになります。かりにC地裁に併合裁判籍が認められない場合でも、被告全員が応訴することによって応訴管轄が生じる余地もあります。そして起訴当時に適法に併合裁判籍が認められれば、管轄固定の原則により、原因となったY3に対する請求が、その後に取り下げられても他の請求の管轄は失われません。したがってY1とY2による管轄違いによる移送の申立ては認められません。
Xははじめから明らかにY3に対する訴訟を追行する意思をもたず、自己の住所地C市を管轄するC地裁に他の請求につき併合管轄を生ぜしめる目的をもって、Y3に対する請求を併合提起したものと解せざるをえません。かかる場合、判例は管轄選択権の濫用として二一条の併合裁判籍を認めないとしています。本問では裁判所の認定により、二一条の適用は認められず、管轄違いにより移送すべきですが、その際原告の意思を反映させるよう配盧すべきです。

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